川島高之 – work、life、socialを行き来する

この新しい時代に求められる人材とは 川島高之

川島 高之

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2021年02月01日

work、life、socialを行き来する融通無碍の精神が人生に好循環をもたらす - [特集]この新しい時代に求められる人材とは

川島高之氏は、三井物産ロジスティクス・パートナーズ株式会社の社長として職場の働き方改革を牽引するとともに、プライベートでも家事や子育て、地域活動などに力を入れてきた。今やNPO活動を通して「イクボス※」の伝道師としても名を知られる川島氏に、職場のリーダーとして、これからの時代に輝ける人材を育てる方法について語ってもらった。

(※本記事は、2021年1月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)

中澤仁美 ≫ 文  波多野 匠 ≫ 写真

川島高之氏(かわしま・たかゆき)

NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表
NPO法人ファザーリング・ジャパン 理事
株式会社 K & Partners 社長

1964年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学理工学部を卒業後、三井物産株式会社に入社。三井物産ロジスティクス・パートナーズ株式会社では代表取締役社長を務め、「日本で一番働きたくなる会社」にするべく改革を進めた(2016年退任)。一方、地元の小・中学校のPTA会長や少年野球のコーチ、おやじの会の代表などを経験。内閣府・男女共同参画委員、文部科学省・学校業務改善アドバイザーなどを歴任。元祖「イクボス」の実践者として注目され、講演活動などでの実績も多数。

work、life、 socialの3領域でそれぞれ求められる人材に

男性は一つの会社で立身出世の頂を目指し、女性はそれを内助の功で支える――。古臭い価値観だが、それをアップデートできていない人もいるだろう。川島氏は、そもそも〝出世〞を〝社内の昇進〞とイコールでとらえること自体に問題があると言う。

 

「出世とは、文字通り〝世に出る〞という意味。これからの社会に求められるのはwork、life、socialという3つの領域で世に出て、活躍できる人材だと思います」

これまで、多くのビジネスパーソンはwork(稼ぐ手段としての仕事)だけを「世」だと考えてきた。しかし、これからは、男女を問わずl i fe(家事育児、趣味、勉強などの自分ごと)やsocial(地域活動やボランティアなどの社会ごと)にも目を向け、それぞれの領域で認められるような人物が求められるという。

「ほとんどのworkがその領域・業種・会社内からのインプットのみなのに対して、lifeやsocialは幅広く人間生活全体からのインプットであり、人として成長できるだけでなく、仕事で役立つことも多々あります」

たとえば、川島氏は地元の小・中学校でPTA会長を務めたことがある。そこでは一般的な会社ではあり得ない困難を経験し、だからこそ得られるスキルがあった。

「専業主婦、学校の先生方、町会長など、様々な方々と活動をしているPTAでは、共通用語が少なく目指す方向性もまちまち、ビジネス用語が通じず、あうんの呼吸もできません。さらに雇用関係ではないため、給与アップなどの方法でインセンティブを付与することも、『上司命令だ!』で押し通すこともできません。PTA会長として、色々な方々を取りまとめ、物事を前に進めてきた経験は、まさに組織のマネジメント能力を大幅に高めてくれました」

組織の目指すべきゴールを設定し、各人のモチベーションをうまく引き出す能力が格段にアップしたという一面だけではなく、家庭や地域という〝ミクロの世界〞を意識することで、仕事上のアイデアが得られることも少なくなかったそうだ。

「ビジネスのヒントが街に落ちている、というのは真実だと思います。どんな業種であれ、消費者の視点が生きないものはないからです。自分の生活のなかで感じた不平や不満が100個あったとしたら、そのうちの1個くらいは自社で解決できるかもしれません」

life やsocialは自らの楽しみや喜びにもとづいて行われるべきもので、仕事のために存在するわけではない。また、即時的に実りが得られるとは限らない。それでも、ビジネスパーソンにとってlife やsocialが仕事にいきるということは必ずあるはずだという。

「仕事が忙しいから、それ以外の活動になんか目を向けられない――。そうやってあきらめてしまうと、負のスパイラルにはまりかねません。つまり、職場以外からのインプットが少ないから、新たな価値の提供やイノベーティブな提案を生み出せない。すると、他人と同じことしかできないのでコストか労働時間で勝負するしかなく、長時間労働になってしまう。そこから抜け出すためにも、lifeとsocialは非常に価値あるものなのです」

「仕事ごっこ」に興じる時代はもう終わり。
本質的な仕事に集中できる組織を作り、徹底した業務効率化を進めることが、プライベートを楽しむ余裕につながります。

上司がプライベートを楽しみ職場の空気を変えるべし

とはいえ、これまで仕事だけに没頭してきたビジネスパーソンにとって、その他の領域に進出するのはハードルが高いようにも思える。とくに家族以外の他者と関わるsocialについては、どう活動の場を見出せばいいのか見当がつかない人も多いのではないか。

「ライフシフトの第一歩を踏み出すために、must、can、willの3点から自身を見つめ直してみてください。mustは、家事・育児・親孝行のように一人の人間として負うべき責務のこと。canは、自身の専門性や知識を生かして提供できる価値のこと。willは、自身の内発的な興味関心の発露として挑戦してみたいこと。これらをとっかかりとして、活躍できそうな場を探すのです」

もっとも望ましいのは、must、can、willの3つが重なり合う領域で居場所を見つけることだ。川島氏にとっては、息子が所属していた少年野球チームのコーチがそれだったという。

「我が子がお世話になるチームだから、保護者として協力するのは一種の責務でしょう。また、私は学生時代に野球をやっていたので、子どもに教えるスキルがあります。さらに、子どもが大好きで、子育て・子ども教育の分野に何かしら関わっていきたいという自身の興味関心にもマッチしていました。皆さんも、自身の生活のなかでmust、can、willの3つが重なり合う領域はどこなのか、考えてみてください」

こうして経営者や管理職がプライベートを充実させることは、職場全体のワークライフバランス改善にもつながるという。日本中に広がったイクボス、実はその定義と10ヶ条を生み出したのは川島氏。そのなかに「ボス自ら、ワークライフバランスを重視し、人生を楽しんでいること」という条文がある。

「上司がlifeやsocialも大切にしていると知れば、それにならう部下も出てくるはずです。日本人はまじめな気質の人が多く、プライベートを充実させることに引け目を感じてしまうことさえありますが、だからこそ『この職場ではlifeやsocialに関わる活動を奨励している』と、上司や経営者が実行して示すことが有効なのです」

働き方改革を牽引するのは上司の重要な仕事

ここまでの川島氏の話を聞いて「理想論にすぎない」と一蹴するのは早計だ。川島氏は、口先だけで理想を唱えるのではなく、真の意味でのワークライフバランスを実現するため実践を重ねてきた経営者なのだ。三井物産ロジスティクス・パートナーズ株式会社では、社員の働き方改革に加えて、徹底的な業務効率化を断行。社員全体の残業時間を1/4まで減らした上で、利益を2 年間で8割もアップ、株価を倍増させたというから驚きだ。

「残業を減らし、休暇を増やすということは、当然ながら労働時間の減少を意味します。それでも組織として追い求める成果の水準を下げず、むしろ従来以上の成果を出していくためには、生産性の高い職場に生まれ変わる必要があるのです」

川島流の働き方改革には3つのポイントがあるという。

「第1に、部下のやる気を引き出すため、どんどん仕事を任せること。日本の管理職は文字通り部下を管理することに力を注ぎがちで、ひどい場合にはリモートワークでも常にビデオをオンにすることを強要しているケースもあります。ゴールを設定したら、そこに至るまでの過程は部下を信じて任せるのが基本。そうすることで人材が育ち、ますます仕事ができる組織になっていきます」

働き方改革を断行するには上司に覚悟が必要であり、これが第2のポイントだ。

「部下に仕事を任せても、最終的な責任は上司自ら引き受ける覚悟が必要です。また、より立場が上の人間に対してイエスマンにならず、場合によっては〝 ノー〞と言い切る覚悟も必要です。更に、暇になる覚悟、決断から逃げない覚悟、見栄を捨てる覚悟、過去に固執し過ぎない覚悟なども必要でしょう」

そして、第3のポイントが〝時間泥棒の断捨離〞だ。「日本人は本当に〝仕事ごっこ〞が大好きですね。その象徴が、意義の低いダラダラした会議。私の経験では、何らかの意思決定をするための会議は、回数、時間、参加人数をそれぞれ半減させることで、会議に割いていた時間を8分の1程度にまで減らすことができます」

回数半減のためには、会議のゴールを定め、時間内に何かしらの結論を出し、簡単な議事録でそれを共有。時間半減のためには、資料を事前に配布し、参加者は会議前にそれを必ず読み、会議は全員が読んできた前提で始める。人数半減は簡単で、ただいるだけの人は出なくていいとするだけだ。

ワークライフバランスを求めることは、決して逃げでも安易な選択でもない。
二兎も三兎も追おうとする難しい挑戦だと、理解しなければなりません。

lifeやsocialからの「還元」をいつの日か必ず実感できる

川島氏が口を酸っぱくして言い続けてきたのが「権利を主張する前に職責を果たせ」ということだ。

「プライベート優先だから、仕事に悪影響があっても許してほしい――。当然ながら、そんな甘い考えは通用しません。『二兎を追う者は一兎をも得ず』ということわざに反して、二兎も三兎も追いかけるのがワークライフバランス。仕事だけに没頭するよりハイレベルな挑戦だということを、部下にも伝え続ける必要があるでしょう」

川島氏自身、育児と仕事の両立を通して、こうした難しさは痛感してきたという。保育園や学童保育のお迎えには時間の制限がある。そのため、退社時刻から逆算して効率的に仕事を進める姿勢が自然と身に付いた。

「あいまいな指示を出されたら、上司にも臆さず意見しました。だって、確認不足でやり直しになったら、お迎えの時間に間に合いませんからね」

当時は今よりもっと男性の育児参加に理解がなかった時代で、川島氏の仕事への向き合い方は良くも悪くも〝異端〞だったに違いない。何度となく嫌な思いもしてきたが、絶対に両立をやり遂げるという意志は曲げなかった。そうして、がむしゃらに走り続けた結果、40歳代前半ごろに変化が訪れたという。

「仕事の向き合い方に余裕が出てきて、成果も出やすくなったのです。子育てがひと段落したこと、立場が上がって部下が増えたことも関係があるでしょう。しかし、それ以上に前述した通りlifeやsocialからwork(仕事)への〝還元〞を受けたことが大きかったのではないかと思っています」

これまでの生き方が実を結び、大きく花開いた瞬間だった。良質なインプットがあるからこそ独創的かつ実現可能なアイデアがアウトプットでき、業界のフロントランナーとして新たな取り組みにも積極的になれた。

「自分の人生に〝正の循環〞が生まれ、円熟の段階に入ったのかなあ、と。work、life、socialを行き来しつつ力を磨いてきたことで、会社を離れて別の世界へ飛び込むこともできたのです」

川島氏は51歳で社長の座を退き、現在ではNPO活動や講演活動に取り組みながら、その知見を生かすことができる新たなフィールドで躍動している。

「コミュニケーションやマネジメントの能力を磨きたい人ほど、life やsocialに力を入れるべきです。私の常套句は〝MBAよりPTA〞。机上の空論を離れて多角的な視野を養うことで、ビジネスパーソンとしてひと回りもふた回りも成長できるからです。そのことは私が身をもって証明していると思っています」

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