中村義裕×新将命【第1回】「無用の学」と「有用の学」 – 教養はぶれない軸と強靱な決断力をもたらす。[特集] リベラルアーツ -生きた教養を身につける-

教養はぶれない軸と強靱な決断力をもたらす。[特集] リベラルアーツ -生きた教養を身につける-

「無用」とは、「役に立たない」という意味ではありません。すぐに役立つわけではないが、中長期的には必ず心の糧となる

日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスといった、グローバル・エクセレント・カンパニーで経営職、社長職を務め、「伝説の経営者」と呼ばれた新将命氏と、歌舞伎をはじめとする演劇全般に造詣の深い演劇評論家・中村義裕氏。二人の達人が、ビジネスパーソンにおける、日本の伝統文化「教養」の重要性と、それを磨く方法について議論を交わした。

白谷輝英 ≫ 文 波多野匠 ≫ 写真

(※本記事は、2018年10月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)

「無用の学」と「有用の学」

―お二人が初めて出会ったのは3年前だと伺いました。

中村 そうでしたか?もっと長い間、お付き合いをさせていただいている気がしています。

―新さんと交流された時間は、それだけ濃密だったということでしょうか。一方の新さん、中村さんの第一印象はいかがでしたか?

新  ひと言でいえば『驚愕』です。歌舞伎などの知識が豊富なだけではなく、生身の歌舞伎役者との親交も幅広い。さらに、ものごとを深く見通す洞察力も兼ね備えている。こんな教養人がいるのかと、心から驚きました。

中村 尊敬する新さんにそうおっしゃっていただけるとは、光栄です!私は以前、新さんの言葉で雷に打たれたような衝撃を受けたことがあります。それは、「中村さんがやっているのは『無用の学』だね」というものでした。

新  この場合の「無用」とは、「役に立たない」という意味ではありません。すぐに役立つわけではないが、中長期的には必ず心の糧となる、ということです。私はビジネスの世界で生き抜くため、経営や事業に関する「有用の学」ばかりを身につけてきました。一方「無用の学」に触れたのは、学びごとに費やした時間のせいぜい1割。今振り返ると、もっと「無用の学」を学ぶべきだったと思いますね。

新 本質を見抜く力や決断力を身につけるには「無用の学」が大切だ。

中村 『勧進帳』を観たからと言って、会社の売り上げがすぐに増えるわけではありませんからね(笑)。

新  そう(笑)。でも、舞台をたくさん観たり歌舞伎の知識を深めたりすると、じわじわと教養が磨かれていきます。それとともに、本質を見抜く力や決断力が身につくのです。中村さんにも、そうした能力の高さを感じましたね。

知識に「ものの見方」をつけ足せば教養に変わる

―ところで、ここまでのお話で「教養」という言葉が登場しました。お二人は、教養についてどうお考えですか?

中村 私は、教養の源は「好奇心」だと考えています。何歳になっても、「これはどうなっているんだ?」「なぜ、こうなるんだろう?」と探っていく。そして、好奇心を満たそうと行動することが、教養をもたらすのではないかと。好奇心に駆られて旅行に出たり、優れた人に惹かれて話をうかがうことも、教養の源泉となると思いますが、いかがでしょう?

新  私も全く賛成です。例えば、聖路加国際病院の名誉院長で昨年お亡くなりになった日野原重明先生は、好奇心の塊でした。100歳を過ぎても、新たなものごとに憧れを持ち、常に知的探究心を働かせていた。一方、20代の若者であっても、好奇心を失ってしまえば老人なのです。

中村 精神的な意味で老人と若者を隔てるのは、好奇心の有無かもしれませんね。

新  好奇心が強ければ、自然に多くの知識を得ようとします。そこに自分なりの考え方、すなわち「ポイント・オブ・ビュー」が加われば、自然と教養・見識が生まれると、私は考えています。

中村 好奇心を満たそうと行動した結果が教養をもたらす。

中村 バラバラな知識に自分なりの考え方を加えることで、教養や知恵に変わるのですね。

新  その通りです。鍋に例えれば、知識とは食材です。どんなにおいしい食材を揃えても、それだけでは食べられない。きちんと味付けしてグツグツと煮込むことで、初めておいしくなるし、栄養もとりやすくなるのです。自分なりの考え方は、言わば「知識の調理法」でしょう。そして教養とは、いろいろな食材のうま味がしみ出たスープのようなものですね。

中村 では、自分なりの考え方を身につけるためにはどうしたらいいのでしょうか?

新  考える習慣を身につけることでしょうね。普段から料理をする習慣があれば、自ずと腕前は上がっていきます。それと同じで、普段から「これはなぜだろう?」と考える習慣をつけておけば、自分なりの考え方も育つはずです。

中村 よくわかります。そして、料理の経験を重ね、いろいろな食材の味を知っていけば、自分好みの味も自ずと分かるようになります。学問も、食わず嫌いをせずにいろいろと学べばいい。そうすれば、自分が好きなことは何かがはっきりとするはずです。

対談者プロフィール

中村義裕(なかむら よしひろ)
演劇評論家・著述家
少年の頃より芝居が好きで、現在までに6,000本を超える芝居を観劇。演劇評論、日本文化研究家。舞台俳優との対談、トークショー、舞台演出、プロデュースなど多彩な活動を展開。一方、歌舞伎、武士道、神と仏、浮世絵などをキーワードに日本文化を語る。早稲田エクステンションセンターで、「歌舞伎ものがたり」「知っておきたい日本の伝統」などの講座を開催中。2018年6月カザフスタン共和国の招きにより、現地で日本の伝統芸能をプロデュースし、大好評を博す。著書に、『九代目・松本幸四郎』(三月書房)、『日本の伝統文化しきたり事典』(柏書房)、『歌舞伎と日本人』(東京堂出版)がある。

新 将命(あたらし まさみ)
株式会社国際ビジネスブレイン代表取締役
1936年東京生まれ。早稲田大学卒。株式会社国際ビジネスブレイン代表取締役社長。シェル石油(現 昭和シェル石油)、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスなど、グローバル・エクセレント・カンパニー計6社で社長職を3社、副社長職を1社経験。2003年から9年間、住友商事株式会社のアドバイザリー・ボード・メンバーを務める。現在、数多くの企業のアドバイザーや経営者のメンターを務めながら長年の経験と実績をベースに、講演や企業研修、執筆活動を通じて国内外で「リーダー人財育成」の使命に取り組んでいる。

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