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中原淳 仕事の学びを科学する経営学習論

中原淳【第4回】伸びる人材を採用しているか – 仕事の学びを科学する経営学習論

中原 淳

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2015年01月29日

新卒採用から人材育成までの全体の流れで、どのような研究がされるべきか、あるいは、今後どのような研究が注目されるかについてお話しいただきました。

近著『経営学習論 仕事の学びを科学する』で企業の人材育成を体系化する一方、数多くの現場のヒアリングを重ねて、ビジネスパーソンの人材育成の悩みと向き合い続ける中原淳。学問とリアルの両方を知り尽くす中原が、今、精力的に取り組んでいるテーマが「実務担当者からマネージャーへの移行(マネージャー育成)」だ。数あるテーマからなぜ、マネージャー育成にこだわるのか? 「中原にしか見えないもの」にフォーカスしてインタビューを敢行した。(4回連続でお届けします。)

(※本記事は、2013年7月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。(記事中の年齢、肩書きなどは2013年取材時のものです。)

伸びる人材を採用しているか

最後に、私個人の活動とは別に、新卒採用から人材育成までの全体の流れで、どのような研究がされるべきか、あるいは、今後どのような研究が注目されるかについて簡単に触れたいと思います。

人材育成については、ここ10年で科学の要素が入ってきて体系化されてきたと感じます。その反面、採用活動は未だに感覚的に行われている。「まじめに働きそうな人だから採用しよう」、「一緒に働きたい人だから採用しよう」といった次元にとどまっています。言うまでもなく、伸びる人材を採用する、というのが人材育成の前提です。

採用というものが科学的に研究されるべき

人材育成の効率をあげるには、今後、採用というものが科学的に研究されるべきだと感じますが、これは個人の研究者ができることではありません。なぜなら、何万人、何十万人という大学生の膨大なデータをもとに、入社後の結果を時系列かつ縦断的に追跡調査しなければならないからです。大きな資本のバックアップが必要でしょう。

中途採用者の教育=組織の再社会化

また、中途採用者の教育については、人材の流動化が強まることを背景に、今後、注目が増すと思います。中途採用者の教育は、学術的な用語では、「組織の再社会化」と言われます。この言葉を見てわかる通り、即戦力だからといってそのまま組織に組み込むのではなく、再教育をする仕組みが必要なのです。現在の中途社員研修では、その企業独自の考え方・やり方を指導することが主になっています。しかし、実は細部の基本的な技術面についても指導する必要があるのです。

人材の流動化の促進には、組織の社会化も必要

わかりやすい例でいいますと、看護士の経験者を採用して、現場に配置したときのことを考えてみましょう。同じ人工呼吸器でも、メーカーや機種が違えば、操作方法は違ってきます。しかし、大半の医療の現場では、あの人は経験者だから、といって任せっきりにしてしまう。

そうすると、ミスが起こりやすくなる。ミスをしたことで、上司から強い口調で注意されたり、同僚から能力がないと見られてしまうと、看護士は売り手市場ですからすぐに辞めてしまう。次の病院に行っても同じことが繰り返され、そのうち本人も私は能力がないのかもしれない、と悩んでしまう。

看護士というわかりやすい例で説明しましたが、こういったことは他業界でも起こっていることです。人材の流動化を促進するには、組織の再社会化を人材育成の枠組みに取り込む必要がありますね。

取材を終えて

図1

冒頭で中原氏が語った、次のコメントが強く印象に残った。

「わが社の社風や風土に合った、地に足のついた人材開発の在り方を、まずは目指すべきです。」

この内容と、当マガジンの別企画で取材した、教育担当者のコメントがほぼ重なっているのは偶然だろうか?そこには、トレンドに流されすぎず、トップと現場をヒアリングし、自社の軸に基づき教育体系を構築することが大事、という内容が出てくる。研究者と教育担当者、立場は違っても、共通の価値観を持っているのだ。ソフトバンクアカデミアの青野事務局長も同様のことを強調されていた。

「自社ならではの人材開発」に対する意識が、教育担当者の間で今、どれくらい強まっているのか。このテーマでの成功例はないか。これから機会があればさらに深堀していきたい。(編集部)

(仕事の学びを科学する経営学習論 了)

(※本記事は、2013年7月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。記事中の年齢、肩書きなどは2013年取材時のものです。)

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