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Resily × KDDI – 「OKR」でイノベーティブな組織をつくる

ノビテクマガジン編集部

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2021年06月04日

〝挑戦〟を生む目標管理のフレームワーク「OKR」でイノベーティブな組織をつくる

GoogleやFacebookが積極的に取り入れたことで注目を集め、革新的な目標設定・管理手法として知られる「OKR」。法人向けクラウドOKRサービスを提供するResily株式会社の西川哲郎氏と、2020年夏にOKRを導入したKDDI株式会社の上谷真史氏の対談を通して、OKRの効果的な導入方法のヒントを探る。

(※本記事は、2021年5月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)

猪俣奈央子 ≫ 文 波多野 匠 ≫ 写真

西川哲郎(にしかわ・てつろう)

Resily株式会社 取締役
東京大学工学部、同工学系研究科卒業後、三井物産株式会社へ入社。金融派生商品における海外子会社管理、ディーリング、アカウントマネジメントに従事した後、外資系独立商社に転職。Resily株式会社ではセールス、カスタマーサクセス、OKRコーチなどお客様向けサービス全体の責任者を務める。

上谷真史(うえたに・まさし)

KDDI株式会社 サービス企画開発本部 企画開発戦略部統括グループ グループリーダー
1970年生まれ。1997年に第二電電株式会社(現KDDI株式会社)に中途入社。情報システム本部にて、社内IT業務を中心に約20年間従事。従業員が共通して利用するシステムやネットワークの企画・開発・運用を習熟し数多のプロジェクトマネージャを経験。2018年に異動を機に、本部統括業務のグループリーダーとして人材育成に携わる。(一社)コーチングプラットフォーム認定コーチ、(一財)生涯学習開発財団認定コーチの資格を取得し、本部HR業務の強化へ取り組んでいる。

スタートアップから始まり大手企業へと広まるOKR

2020年7月、KDDI株式会社は一部の部門で「OKR」を管理職の目標管理に導入した。同年12月には、花王グループが中期経営計画の柱の1つとしてOKRの全面導入を発表。このように近年、目標管理にOKRを導入する企業が増えている。なぜ今、OKRが注目されているのか。法人向けクラウドOKRサービスを提供するResily株式会社の西川氏と、2020年夏にOKRを開始したKDDI株式会社の上谷氏はこう話す。

Resily 株式会社 取締役西川哲郎

Resily 株式会社取締役 西川哲郎

西川

OKRは、新しい目標管理のフレームワークだと捉えられていますが、世界的にみると、40年ほど前からすでに存在していました。2000年代初めにGoogleが導入したことで注目され、いまはグローバルスタンダードになっています。日本ではメルカリやSansanなどのスタートアップが火付け役となり、一種のブームのように広がっていきました。それから5年、10年と経ち、現在はKDDIや花王をはじめとする大手企業が次々と導入しています。

それはなぜか? やはり、多くの大手企業で採用されているMBOの目標管理システムが、VUCAといわれるような俊敏性が求められるビジネスシーンで役割を果たせていない現状があるからです。

「半年後、1年後の目標を決めるスパンでは社会の変化についていけない」「目標自体が形骸化している」「達成することに重きが置かれ、チャレンジングな目標を掲げられていない」などの課題も散見されます。花王の長谷部社長は「従来の延長線上で物事を考えていても、これ以上の成長は見込めない」と語っていますが、目標管理をOKRに変更することで俊敏な組織体制に移行し、新たなイノベーションに繋げたいと考える企業は増えています。

KDDI株式会社 サービス企画開発本部 企画開発戦略部 統括グループ グループリーダー 上谷真史

KDDI株式会社 サービス企画開発本部 企画開発戦略部 統括グループ グループリーダー  上谷真史

上谷

私が所属するサービス企画開発本部では、2020年7月にOKRをトライアル導入しました。導入の背景には、これから新たなイノベーションを創出していくうえで、〝挑戦する風土〞を醸成したいというトップの思いがあります。

サービス企画開発本部では、事業部門が分かれていた「企画部門」と「開発部門」を1つの組織にまとめ、これまでにはなかった視点や刺激をお互いに与えあいながら、さらなる成長を目指そうとしています。サービス企画開発本部が改革を主導していく立場としてまずOKRを導入し、先ほど申し上げた〝挑戦する風土〞を体現できればと考えています。

チームや個人のモチベーションを高める挑戦しがいのある目標設定が可能に

OKRとは「Objectives and Key Results」の略称。
会社や組織の定性的な目標(Objectives)を決め、目標を達成するためにはどのような成果が必要かという成果指標(Key Results)を出していく。

特徴的なのは、目標の100%達成を重視する旧来の目標管理手法とは異なり、60〜70%の達成で良しとする点だ。そのためチームや個人のモチベーションを高めるような野心的な目標を立てられる。

高い頻度で設定・追跡・再評価を繰り返し、プロセスを大事にする点もOKRならでは。これまでMBOによる目標管理を行っていたKDDIでは、概念の異なるOKRをどのように取り入れたのだろうか。

上谷

当社では管理職の目標管理を見直し、「挑戦」と「成果」という2 軸で評価することになりました。「成果」の指標は従来どおりのMBOで行い、「挑戦」の指標にOKRを導入。つまり、管理職はMBOとOKR、2つのフレームワークを用いて評価されることになります。非管理職についてはMBOでの目標管理・評価フレームがあるため、その中の一部の業務をOKRで設定するなど工夫して取り入れました。

西川

大手企業においては、1〜2部門もしくは数百名程度のパイロットチームでOKRを導入し、順次全社に広めていくのが一般的です。小さな組織で試した成功パターンや課題を人事が洗い出し、自社にフィットする制度に落とし込んでいきます。画一的に「4月から全社でOKRを始めましょう」と号令を出すのは、現実的ではありません。モデルとなるフレームワークをそのまま持ち込んでも、たいていうまくいかないからです。事業内容や業界の慣習、組織規模、目指す姿やカルチャーなどに合わせて、1つずつチューニングしていく必要があります。

OKRを〝流行り〟としてではなく、 本質的な〝組織改善〟のツールとして捉える企業が 増えている印象があります。 - 西川 -

OKRを〝流行り〟としてではなく、本質的な〝組織改善〟のツールとして捉える企業が増えている印象があります。

OKRは簡単に導入できる魔法の杖ではない

OKRは魔法のフレームワークで、導入すればみるみる組織が変わっていく、としばしば期待される。しかし、そんな簡単な話ではないと両氏は語る。KDDIも、OKRの導入以降、さまざまな壁にぶつかった。

上谷

まだ当社も手探りの状態。形になっているとはとても言えません。そもそもOKRの目標や成果指標自体、どのように設定すればいいかわからないところからのスタートでした。本部がOKRの進め方をリードしなければ、結局、メンバーはMBOと同じような目標を設定してしまいます。どんな枠組みでどのように目標を立てるべきか、喧々諤々で話し合う日々が続きました。

加えて、MBOと並行して進めたため、リーダーやメンバーにかかる負担が大きいことも課題の1つでした。当社はOKRとほぼ同じくして1on1の取り組みを本格化したので、「本業があるなかで、そんなに時間をかけられないよ」というのがリーダーの本音だったのではないかと思います。

私たちもまだ試行錯誤の途中。 OKRの導入を試みることで、 もともと会社や組織にあった課題が見えてきました。 - 上谷 -

私たちもまだ試行錯誤の途中。OKRの導入を試みることで、もともと会社や組織にあった課題が見えてきました。

西川

大手企業をはじめMBOの目標管理を導入している会社では、目標の二重管理をどうするかという問題が必ず出てきます。移行期というのは、どうしても負担が大きくなります。「①目標を決めて、②それを達成するためのコミュニケーションを考え、③それらにあわせた評価や報酬の制度をつくる」という3つは、本来切り分けて考える必要があるもの。一つひとつていねいに見ていくと、やることが3倍に増えるわけです。慣れるまでは当然大変です。しかし、あるべき姿に近づいているとも言えます。たとえば、1on1をチーム会議でまとめて行ったり、ITツールを使ったりすることで、負担を軽減していく方法もあります。

「目標設定」「フィードバック」「人事評価」。 この3つを切り分けて考えるのが、 目標管理のあるべき姿。

「目標設定」「フィードバック」「人事評価」。この3つを切り分けて考えるのが、目標管理のあるべき姿。

上谷

これは西川さんからアドバイスいただいたことでもあるのですが、私たちがOKRを成功させるために、まず行ったのは「組織のトップからメッセージを発信してもらう」ことでした。なぜOKRを導入する必要があるのか。OKRを導入することで、どんな組織をつくろうとしているのか。組織のトップ自ら、強い言葉で社員に語りかけることで、本気で変わろうとしている会社の姿勢を示しました。「少々大変だったとしても、OKRをうまく活用していかなければならないし、やる価値のあることなんだ」という危機感が社員に伝わったと思います。

同時に、私たちが行ったのは、本当に地道な活動です。OKRの説明会を開催したり、アンケートをとって現場の状況をヒアリングしたり、リーダーを中心とした意見交換会を設けたり、「OKR賞」を設けて月1回成功事例を共有したり、個別の疑問や質問に応えたり……本部から絶えずメッセージを送りながら、同時にOKRをうまく運用できるように改善を繰り返していく。まさに今、その過程にあります。

半年以上が経過し、良い変化も見られます。体感しているのは、社員一人ひとりの成長です。OKRの目標を設定する過程で、受け身ではなく主体的に、自身のキャリアやミッションについて考える機会が増えました。また、「全社ナンバーワンになりたい」など、これまであまり出てこなかった言葉が飛び交うようになりました。「OKRを導入したことで、これまでとは違う行動を起こしてくれるメンバーも出てきた」と話すリーダーもいます。

「会社の成長」と「個人の成長」をリンクさせ、 どちらも実現するのが、 もっとも良い組織だと思っています。

「会社の成長」と「個人の成長」をリンクさせ、どちらも実現するのが、もっとも良い組織だと思っています。

西川

企業により異なりますが、OKRを導入し、組織やチームに良い変化が起こるまで、だいたい9〜12カ月を要します。OKRは3カ月が1つのサイクルとなりますが、1回目は失敗し、2回目は課題が明確になり、3回目でようやく理想のやり方が見えてくるケースが多いです。一直線で組織が良くなっていくというよりは、水面下で努力を続けた結果、ある日突然、個々人の成長を実感できたり、組織に良い変化が現れたりするものなのだと感じています。

上谷

OKRを組織に根づかせることは、ある意味、企業文化を変えていくことと同義です。文化はやはり1日では築けません。なかなか成果が出なくても焦らずに、そして現場任せにせずに、試行錯誤を続けることがなによりも大切だと考えています。

Resily株式会社とKDDI株式会社、それぞれの現場でOKRを推進する仲間(左から、KDDI株式会社 上田さん、上谷さん、Resily株式会社西川さん、佐川さん)と共に。お互いに情報交換をしながら、OKRの効果的な活用法について模索を続けています。

Resily株式会社とKDDI株式会社、それぞれの現場でOKRを推進する仲間(左から、KDDI株式会社 上田さん、上谷さん、Resily株式会社西川さん、佐川さん)と共に。お互いに情報交換をしながら、OKRの効果的な活用法について模索を続けています。

Resily株式会社
東京都千代田区神田神保町3-12-3神保町スリービル8階
〝会社をひとつのチームにする〟というミッションを掲げ、OKR導入・運用改善コンサルティングおよび自社開発のクラウドOKRツール『Resily』を展開。
https://resily.com/
https://resily.com/okr

KDDI株式会社
東京都千代田区飯田橋3-10-10 ガーデンエアタワー
豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献するため、重要なライフラインを担う通信事業者として、どんなときでもつながり続ける通信サービスの提供を目指す。
https://www.kddi.com/

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