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ハロルド・ジョージ・メイ プロ経営者が伝える人の能力の引き出し方 Vol.31 ノビテクマガジン

ハロルド・ジョージ・メイ – プロ経営者が伝える 人の能力の引き出し方

ハロルド・ジョージ・メイ

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2023年06月12日

ハロルド・ジョージ・メイ - プロ経営者が伝える 人の能力の引き出し方

テレワークの導入、職場での雑談減少などで、企業内のコミュニケーション環境は激変している。こうした中、企業の経営層や管理職には、部下のやる気を引き出し、能力を十分に発揮させるための新たなやり方が求められている。タカラトミーや新日本プロレスでプロ経営者として社員を巻き込み、立て直しに成功したハロルド・ジョージ・メイ氏に、部下との関係性を築くコツを聞いた。

(※本記事は、2021年5月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)

佐々木信之 > 写真 白谷輝英 > 文

ハロルド・ジョージ・メイ

ハロルド・ジョージ・メイ

アース製薬株式会社社外取締役/パナソニック株式会社顧問/株式会社サンリオ顧問
1963年オランダ生まれ、8歳から13歳まで日本に在住。米バックネル大学卒業後ハイネケンジャパンに入社し、その後は日本リーバ(現ユニリーバ・ジャパン)やサンスターでマネージャー職や役員を務め、日本コカ・コーラでは副社長を務めた。また、日本リーバ時代にはニューヨーク大学で修士課程を修了。2014年、タカラトミーの副社長兼COO兼海外事業統括本部長に就任し、翌年には代表取締役社長兼CEOとなった。2018年には新日本プロレス代表取締役社長兼CEOに就任。現在はアース製薬の社外取締役やパナソニック、サンリオの顧問を務める。

幅広い経験を背景に持つ経営のプロフェッショナル

ハロルド・ジョージ・メイ - プロ経営者が伝える 人の能力の引き出し方

ハロルド・ジョージ・メイ氏は、ピンチに陥っている企業を立て直す経営のプロとして名高い。
2014年に入社し、2015年から代表取締役社長兼CEOを務めたタカラトミーでは、海外事業の立て直しや、『リカちゃん』や『トミカ』など大人向け商品の開発・強化によって収益を大幅に改善。それまで赤字が続いていた同社をV字回復に導いた。

また、2018年に新日本プロレスの代表取締役社長兼CEOに就任すると、選手同士の関係性や過去のストーリーを、国内はもちろん海外にも詳しく発信するなどの新戦略を実行して、過去最高の売上額・利益を達成した。2019年4月には、格闘技の聖地とも呼ばれるニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで興業を開催。1万6000席はわずか19分で完売し、当日は満員の観客を熱狂の渦に巻き込んだ。

幅広い経験を積んだことが経営者としての最大の強みだと、メイ氏は自己分析する。

「私に特別な点があるとすれば、それは3つにまとめられます。まず1つ目は、日本企業と外資系企業の両方を知っていることです。社会人になって30数年たちますが、キャリアの半分が日本企業で、残り半分が外資系企業でした。双方の考え方や長所・短所を体感できたことは、大きな財産になっています。2つ目は、マーケティングと営業の両方を知っていることです。たとえば、日本コカ・コーラでは、最初はマーケティング部門の責任者を務め、次いで営業部門の責任者になりました。今の私は、両分野の知識をベースにしながら経営にあたっています。3つ目は、〝モノ〟と〝コト〟の両方に携わってきた点です。長い間メーカーで働いてきましたが、新日本プロレスではじめて、〝コト〟や体験を売るビジネスを手がけました。今後の世の中はモノからコトに、そして国内市場からグローバル市場へとシフトしていきますから、新日本プロレスで海外にコンテンツを売り込むビジネスに取り組んだことは、私にとって強い武器になっています」

外部から招かれた落下傘型経営者にとって、「最初の100日間」が勝負の分かれ目。
ここで社員の心をつかみ、マインドを変えることで私は経営改革を成功させてきました。

外部から招かれた落下傘型経営者にとって、「最初の100日間」が勝負の分かれ目。
ここで社員の心をつかみ、マインドを変えることで私は経営改革を成功させてきました。

消防隊司令官の経験がリーダーシップの土台に

これまで経営者として活躍してきたメイ氏は、リーダーには大切な要素が3つあると語る。

「1つ目は戦略を立てる力です。とくに経営者には、企業のビジョンとミッションをきちんと定め、社員に方向性を示す能力が欠かせません。2つ目はマーケティングの知識。自社の商品やサービスの良さを消費者に訴えかけるには、マーケティングが力を発揮します。そして3つ目の要素がリーダーシップです。戦略や商品・サービスが優れていても、それを実際につくって売るのは、人。リーダーが収益を伸ばしたいなら、人を上手に導く力が不可欠です」

このうち、戦略立案とマーケティングの基礎は大学などで学ぶことが可能。一方、リーダーシップの取り方や、人と人とが衝突した際の解決方法などを教える講義は、アメリカの大学にもほとんどなかったとメイ氏は振り返る。 では、メイ氏はどこでリーダーシップを身につけたのだろうか。答えは、大学時代に参加した消防隊だった。

「大学の入学式で学長が『大学は勉強するだけの場ではない』とスピーチしました。大学時代は学問に加えて、ものの考え方や人間関係の築き方も学ぶべし、というのが彼の教えで、これが私の人生に大きなインパクトを与えました。私は、大学以外で実践的な経験を積もうと考え、ある日、大学近くの消防隊がボランティア隊員を募集しているのを見つけ入隊しました。活動内容や資格、トレーニングメニューなどはプロの隊員とまったく同じ。違っていたのは、大学などの都合に合わせて好きな時に休めることと、無給であることだけでした。当然、隊員として危険な火災現場にも何度も出動しました。私の体には、当時の傷痕がたくさん残っています。私は、とことんのめり込む性格。大学在籍中に消防学校に通っていくつも資格を取り、最終的には選挙で全米最年少の司令官に選ばれました。隊員たちは全員、私より年上。彼らを率いる重圧は、私を鍛えてくれましたね」

火災現場では、刻々と変わる状況に合わせて柔軟な対処が求められた。また、無給にも関わらず危険な現場に投入される隊員たちを、司令官として盛り立てる必要もあったという。その際に磨いた能力が、メイ氏のリーダーシップの土台になっているのだ。

パッションとビジョンで部下のやる気を引き出す

コロナ禍により、ビジネス界では先の見えない状況が続いている。こうした中、トップにはムードメーカーの役割が求められるとメイ氏は指摘する。社員に「この経営者の下なら、会社は良くなる」と感じてもらえなければ、変革などとても望めないというのだ。

「私は新経営者として就任した最初の100日間を、ムードセッティングに費やします。この期間内に社員の気持ちを変えられるかどうかが、勝負の分かれ目なのです」

社内のムードを一新する際にメイ氏が重視しているのが、「パッション」と「既存のやり方の受容」の2つだ。

「社員にパッションを見せることは、経営者や管理職にとってきわめて重要です。自社の商品やサービスに対する強い愛情と誇り、そして、この会社をよくしたいという真心を熱く伝えれば、社員の心はきっと動くでしょう。過去を否定しないことも大切。経営立て直しのため外から招かれた経営者は、これまでのやり方を否定して自分の経営手法を押しつけがちです。でもそれでは、以前から在籍していた社員は反発するでしょう。そこで、古いやり方や既存商品・サービスの良さを、まずはいったん認めるのです。その上で、一部を改善すれば会社はずっと良くなると示せば、社員を巻き込みやすくなります。他にも、『データを使って説得する』『単に命じるのでなく、自分から手本を示したり一緒にやったりする』『オープンドアポリシーを採用して社員との壁をなくす』などを大切にすべきです」

そしてもう1つ、メイ氏が重視しているのが、ビジョンを明確にすることだ。

「1961年、アメリカのケネディ大統領は『10年以内に人間を月に着陸させる』と宣言しました。当時は、ニューヨークからロンドンに飛行機で向かうことですら大変だった時代でしたが、大きなビジョンを掲げることで国全体をその気にさせ、アポロ計画へとつなげたのです。私が新日本プロレス入社直後、マディソン・スクエア・ガーデン興業を実現させたのも同じ意図でした。当時の新日本プロレスにとって海外興業はハードルが高かったのですが、ビジョンを示し、情熱を込めて説得するうちに、社員たちはだんだんと『実現できるかもしれない』『やってみるか!』と意識が変わっていったのです」

多くの日本企業の経営者にとって、短・中期の計画を立てるのは得意分野だ。一方、30年くらいの長いスパンで見通しを立て、壮大なビジョンを打ち出すことは苦手なケースが多い。この部分を改善すれば日本企業の経営者はさらに活躍できるのではないか、というのがメイ氏の見立てなのだ。

社員の希望を把握し力を発揮できる機会を提供

メイ氏は、社員の希望を聞き取る機会を積極的に設けている。それが、社員のやる気を高めるカギの1つだ。

「タカラトミーや新日本プロレスでは半年に1度のペースで、全社員にやりたい仕事とやりたくない仕事をヒアリングしていました。また、新日本プロレス時代には、全幹部と1日中人事の話だけをする『ピープルデー』を設けていました。 たとえば、営業だけはどうしてもやりたくないという人を営業部に配属したら、その人は当然モチベーションを下げますし、最悪の場合は退職してしまうでしょう。一方、希望の仕事を任せれば、一生懸命勉強していろいろなアイデアを出してくれるはずです。各メンバーの希望をきちんと把握し、それに合ったチャンスを与えることは、リーダーにとって真剣に取り組むべきことだと私は思います」

改革を進める際には、守旧派に反対されることもある。そうしたときは、とりあえず動いてみよう、と社員を鼓舞するのがリーダーの務めだ。

「社員には、『反対意見があればどんどんぶつけてくれ。ただ、対案なくやみくもに反対するのはダメだよ』とよく話します。ビジネス環境が激変する現代、じっとしていても状況は絶対に改善できません。まずは行動することが大事だと社員に繰り返し伝え、全社員が能動的に動ける組織にすることが大事だと思います。もし、進むべき方向が間違っていたら、その都度修正すればいいのです。社内が保守的で動かない間も、外部環境や競合はどんどん動いています。もたもたしている暇はありません」

今後のリーダーには、テレワーク環境でも部下のモチベーションを高める能力が求められるとメイ氏は語る。オンライン会議で部下の本音を引き出したり、上手に励ましたりするためのスキルを学ぶと、仕事に役立つかもしれない。

「ワクチンの接種が始まり、コロナ禍には解決の糸口が見えつつあります。ただ、今後も新たなパンデミックが発生する危険性はありますし、いったん広まった〝ニューノーマル〟が元に戻ることもないでしょう。これから訪れる新たな時代に備え、常に新たな能力を磨いていくこと。その姿勢が、どんなリーダーにも必要なのです」

ハロルド・ジョージ・メイ

壮大なビジョンを明確に提示し、パッションを込めて伝えること。
社員の気持ちをきちんとつかみ、チャンスを与えること。
それがやる気を引き出し、彼らが前に進む力につながるのです。

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