高橋博之【第1回】一次産業の声なき声を伝える

「拡声器」の役割を果たし一次産業の声なき声を伝える 高橋博之

高橋 博之

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2020年05月18日

「拡声器」の役割を果たし 一次産業の声なき声を伝える

「相手が何人だろうと、何者だろうと関係ありません」

自分が本当にやりたいことを説明し、協力を得られるまでに納得してもらうのは並大抵のことではない。相手が初対面の人や、異業種の人であればなおさらだ。しかし、それを実現してきたのが高橋博之という人物。新しいメディアやサービスを立ち上げ、生産者と消費者をつなげる「縁の下の力持ち」に、相手の心を動かす〝伝え方の極意〞を訊いた。

中澤仁美≫ 文、佐々木信之≫ 写真

(※本記事は、2020年1月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)

高橋博之(たかはし・ひろゆき)

1974年、岩手県花巻市生まれ。岩手県議会議員を2期務めた後、2013年にNPO法人東北開墾を立ち上げ、食べ物付き情報誌「東北食べる通信」編集長に就任。2014年、一般社団法人「日本食べる通信リーグ」を創設。2016年、農家や漁師から旬の食材を直接購入できるスマホアプリ「ポケットマルシェ」をローンチ。『だから、ぼくは農家をスターにする──「食べる通信」の挑戦』(CCCメディアハウス)、『都市と地方をかきまぜる──「食べる通信」の奇跡』(光文社)など著書も多数。株式会社ポケットマルシェ代表取締役社長、一般社団法人日本食べる通信リーグ代表理事、非営利活動法人東北開墾代表理事。

3.11で初めて知った食べ物が作られるプロセスの魅力

生産者と消費者を直接つなぎ、出品や購入、メッセージのやり取りなどを自由にできるCtoC型のプラットフォーム、それが”ポケットマルシェ”。一次産業従事者のみが出店者となり、自ら価格や販売量などをコントロール。商品や生産者そのものに魅力を感じた消費者は、購入することだけでなく「コミュニティ」という機能を使って調理法や味の感想などの情報を生産者と交換することもできる。登録する生産者は1800人以上を超える大人気のサービスに成長した。

高橋博之 一次産業の声なき声を伝える

ポケットマルシェを生み出した高橋博之氏は、実は一次産業出身の人物ではない。むしろ農業や漁業についてはまったくの門外漢で、もともとは岩手県議会議員を務めていたというから驚きだ。

「転機となったのは東日本大震災でした。ボランティアとして地元の農家や漁師のもとに駆けつけ、そこで初めて『食べ物ができる裏側』を知りました。それまで食べ物といえば味や価格、カロリーなどにしか目が向いていませんでした。しかし、生産のプロセスを知ることで、”それならこの金額になるよね”と納得感をもって消費者に受け入れられ、食べ物の価値がグッと上がることに気づきました」

実際、都会から来たボランティアたちが、地元食材に”ファン化”していくケースも多く目にしたという。そして、このような交流が日ごろからできれば「日本の一次産業が抱えている課題の解決につながるのではないか」と考えるようになった。

「人間の根源的な営みである食のあり方を変えることは、〝社会全体を変える糸口になるかもしれない”という想いもありました」

思い切って震災後の県知事選に立候補し、被災地沿岸部270キロをすべて歩きつつ遊説したものの、惜しくも次点で落選。「ならば口よりも手足を動かして想いを示そう」との考えから実業家に転身した。

アウェイな状況でも煙たがれることを恐れず、熱い想いをぶつける

高橋氏が最初に手を付けたのは、メディアの創設だった。2013年に立ち上げた「東北食べる通信」は、食べ物付き情報誌というユニークなコンセプト。生産者の想いや作られる食品に関しての情報をメインとして、あえて食べ物はサブと位置付けた。

「自分たちの創意工夫や苦労がまったく消費者に伝わっていないことに、フラストレーションを抱えている生産者は少なくありません。そのことを含め情報発信し、生産者と消費者の橋渡しをしたかったのです。生産者のもとを訪れ、なぜこの取り組みが必要なのか説明を繰り返しました」

その想いに賛同する生産者やスタッフが少しずつ増えていき、メディアとしての影響力も高まっていった。今や国内および海外の40カ所以上の地域で「食べる通信」が発行されているという。その経験は、ポケットマルシェの誕生や発展にも大いに生かされたそうだ。

高橋博之 一次産業の声なき声を伝える

秋田県仙北市の齋藤農園の作業小屋。休憩中の地元のおばあちゃんたちの話に耳を傾ける。

「東北食べる通信を通して事前に生産者ファーストの姿勢が伝わっていたからこそ、話を聞いてもらえることも多かったです。年月をかけて蒔いてきた種が、次第に芽吹いてきたような感覚でしたね」

日本全国を回りながら、津々浦々の生産者と膝詰めで議論を交わしてきた高橋氏。初対面の相手でも遠慮なく、熱い思いをぶつけてきたという。相手から煙たがられるなどして、がっかりすることはなかったのだろうか。

高橋博之 一次産業の声なき声を伝える

宮城県石巻市給分浜。メロウド漁に出る準備をする漁師から熱心に話を聞く高橋氏。

「そもそも大歓迎されることのほうが珍しいんです。まったく農業の経験がない人間がプロの農家を相手に何かを語ろうというのだから、『なんだこいつは!』と品定めされて当たり前。むしろアウェイな環境のほうが、思い切って話せるような気がしています。話しは格闘技のようなもの、好かれなくてもよいので遠慮なくやるのが大事だと思っています」

高橋博之 一次産業の声なき声を伝える

福島県相馬市の水産市場。鶏を育てる農家が餌に使う未利用魚と生産野菜を物々交換するところを取材している様子。

このハートの強さは、政治家時代に培われた部分も大きいという。自らの出身地であり選挙区でもあった岩手県花巻市は、田園風景が広がる人口10万人ほどの都市。田んぼの畔に立ち、周囲に人間より動物のほうが多くいるような状況で何時間も街頭演説をする。それを何年も続けてきた。

高橋博之 一次産業の声なき声を伝える

宮城県石巻市雄勝。仕掛けの網カゴを直す漁師を取材する高橋氏。

「相手が何人だろうと、何者だろうと関係ありません。自分が本当に伝えたいことを、誠意をもって真っすぐ伝えるだけ。あの街頭演説は、ある意味で修行だったのかもしれませんね」

高橋博之 一次産業の声なき声を伝える

相手が何人だろうと、何者だろうと関係ない
誠意をもって自分の思いを伝えるだけ

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