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ドミニク・チェン【第2回】日本人が本来持つコミュニケーション手法を組織に活かす – ウェルビーイングな組織づくりのヒントは「阿吽の呼吸」にあり。
【コラムジャンル】
ウェルビーイング , コミュニケーション , づくり , ドミニク・チェン , ヒント , 呼吸 , 手法 , 持つ , 日本人 , 本来 , 活かす , 第2回 , 組織 , 阿吽
2018年05月22日
ウェルビーイングな組織づくりのヒントは「阿吽の呼吸」にあり。
「企業でも、従業員同士が異なるコンテキストを共有し、その上でお互いの個性を尊重し合えれば、スピーディーな意思疎通が可能になる」
近年、企業では「ウェルビーイング」に関しての注目が集まっている。「ウェルビーイング」とは何か? なぜ注目されているのか?日本の企業にとりいれるとしたらどうしたらよいのか?
科学的、行動学的知見、心理学、哲学的な洞察から、新しいコンピューティングのあり方を提唱しているドミニク チェン氏に聞いた。
小谷奉美 ≫ インタビュー 櫻井健司 ≫ 写真 白谷輝英 ≫ 文
(※本記事は、2017年7月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)
日本人が本来持つコミュニケーション手法を組織に活かす
日本企業がイノベーションを起こせなくなり、シリコンバレーのやり方を積極的に取り込もうとしている今、日本式のコミュニケーション手法も否定的に見られがちだ。だがドミニク氏は、どんなものごとにも正と負の面があると指摘する。日本式コミュニケーションは、ともすれば全体主義に陥って個人の意見を押しつぶす危険性をはらんでいるだろう。しかし半面では、組織を円滑に動かす原動力にもなりうるというのだ。
「私たち研究者は、よく『阿吽の呼吸』で会話をすることがあります。研究の世界では多くの共通のコンテキスト(=文脈)が共有されているため、ごく短い言葉を交わすだけでも意味・内容を過不足なく伝えることができるのです。一方、研究者はそれぞれ独自の考えを持っていて、それを尊重し合うこともできます。 企業でも、従業員同士が異なるコンテキストを共有し、その上でお互いの個性を尊重し合えれば、スピーディーな意思疎通が可能になるでしょう。これはビジネスにおいて、強力な武器になるはずです」
ウェルビーイングな組織は「よいぬか床」に似ている
ドミニク氏は、ウェルビーイングな組織を「よいぬか床」に例える。
「ぬか漬けとは、米ぬかに乳酸菌などの菌を繁殖させ、そこに野菜などをつけ込んだものです。よいぬか床を作ることができれば、キュウリでもカブでも放り込んでおけば、勝手に美味しいぬか漬けができあがります。 ここで重要なのは、『ぬか床の全てを自分ではコントロールできない』という点です。目に見えない菌を直接増やすことはできません。我々にできるのは、かき混ぜたり塩分を調節したりして、ぬか床全体がよい方向に進むよう手助けすることだけなのです。 組織においても同じことが言えるでしょう。上から命令するだけでは、それぞれのウェルビーイングが担保される組織を生み出すことはできません。経営者や人事担当者には、組織の現状を見ながら適切な支援を行うことが求められるのです。そうして組織の構成員が自律的に働ける方向に導ければ、自然と前向きな組織が生まれるというのが、私の考えです。 日本の企業は、もっと日本独自の文化に自信を持っていいのではないでしょうか。何でも欧米式のやり方に切り替える必要はありません。これまで続けてきた日本のやり方にも、優れた部分はあるでしょう。それを再発見することで、ウェルビーイングが溢れる組織づくりを目指してみてはいかがでしょうか」
ウェルビーイングな組織づくりのヒントは「阿吽の呼吸」にあり。(了)
講師紹介
ドミニク チェン
1981年、東京生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)を卒業後、東京大学大学院博士課程を修了。博士(学際情報学)。NPO法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン設立理事として著作権の新たな仕組み作りに尽力するかたわら、2008年に創業した株式会社ディヴィデュアルでウェブやスマホに向けたコミュニティアプリなどを開発している。2017年4月、早稲田大学文学学術院・表象メディア論系准教授に就任。 キャプション:従業員同士が異なるコンテキストを共有し、その上でお互いの個性を尊重し合えれば、スピーディーな意思疎通が可能になるでしょう。
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テクノロジー, ビジネススキル, 人材育成, 情報学,早稲田大学文学学術院・表象メディア論系准教授/株式会社ディヴィデュアル共同創業者
NPOコモンスフィア理事 ドミニク・チェン 講師のプロフィールはこちら