目指せ!デキるビジネスパーソン~マグロ船から学んだ全てのこと~
【第3回】優れたリーダーになるためには、”何もしない時間”が大事

優れたリーダーになるためには、”何もしない時間”が大事

マグロ船の操舵室にも多くの計器があります。どんな機能があるのかはサッパリとわかりませんが、様々な色に光るランプを見るだけで、男心をくすぐられます。

 

船酔いで青い顔をしながらも、操舵室では計器を眺めてうっとりと陶酔している様子は漁師から見ると相当ブキミだったらしく、「ボタンやら勝手に押すんじゃねーぞ!」と何度も怒られ、自分の信頼のなさを痛感させられました。

 

なお、操舵室には常に誰かがいるようにしています。それはもちろん、私がボタンを押さないように見張っているわけではなく、前方に障害物がないかを見る、“ワッチ”という仕事をしているのです。ワッチの語源は、「見る」という意味の「ウォッチ(watch)」で、船の仕事では共通で使われている言葉だそうです。

 

ワッチは、ひとり2時間の当番制になっており、なーんにもない赤道付近では360°、地平線しか見えません。たいていは何もない海を2時間見つめるだけで終わるので退屈極まりない仕事です。夜間はさらに退屈な時間となり、何も見えない漆黒の風景をずぅーっと見ているのははなはだ苦痛です。

 

しかし、うっかりワッチの船員が寝てしまうと、船はただただ前に進むだけですので、運悪く前方に船舶がいた場合、衝突事故を起こす可能性があるのです。

私が付き添いでワッチに立ったときは、「漁師を居眠りさせないように」という意味と、「自分が眠くならないように」というふたつの意味で、漁師に色々話しかけたり質問をしたりしていました。

 

私にとって漁師たちに対する疑問のひとつは、「これまでお話ししてきたような、示唆に富む発想をどこで得ているのか?」ということでした。私が見てきた限り、漁師たちはビジネス書を読んだりすることはなく、毎日、パチンコや野球の話など、どうでもいい話でゲラゲラ笑いあっているだけです。

 

失礼ながらワッチ中の漁師にこのことを質問すると、
「おいどーらが、色々知っちょるように見えるんは、たぶんワッチしよるからかもしれんの」
と真っ暗で何も見えない真っ暗な夜の海を見つめ、見張り台であぐらをかいたまま言われました。

 

 

「ただ、前を見てるだけの退屈な仕事が、大事なんですか?」

 

「齊藤は、会社に行くときやら電車にやら乗っちょろうが。 そんときは何しよる?」

 

「本を読んだり、携帯でメール打ってたりしますが……」

 

「そいつが悪ぃんよ。 ワッチの時間はの、今日一日を振り返るのにちょうどエエんど。
『アイツには昼間もっと、
あげー言うてやったほうがよかったの』とかいうふうにの。
一日を振り返る時間やらを持たんでおると、どんなエエ話を聞いちょってもザルに水を張るようなもんで全部素通りしよる」

 

「なるほどですね……。 自分に使えるような形に応用ができないのでしょうね」

「どうしたら、もっと会社をよくできるか?」。それを考えたとき、私は、「トヨタの5回ナゼを繰り返す」とか、大手企業がうまくいったやりかたを取り入れて、劇的に良くしようと思っていましたが、どれもうまくいきませんでした。

 

それはもちろん方法自体が悪いのではなく、「魔法のように一発で効く手軽な方法はないか?」と考えていたのです。

 

でも、南国で育つマンゴーがシベリアで育たないのと同じで、社風に合わないやり方を一気に移植しようとしてもムダなのです。

 

地味で時間がかかるようですが、より優れたリーダーになるには、よそからいい方法を持ってくるのではなく、自分の行動態度をじっくりと振り返り、「自分のやり方でいけないところはなかっただろうか?」、「部下がどうやったら、もっと笑顔で働けるだろうか?」と、自分のあり方を見直すほうが、実は職場を変える近道になると思うのです。

 

 

今の私たちは、“ヒマな時間”がありません。本・携帯電話・パソコン・携帯型ゲーム機など、いくらでも時間を潰せるものがあります。ただしそれがくせ者で、今日あったことを反省したり、考える時間を持つということをしなくなってしまいました。

 

それによって改善点を毎回見過ごし同じミスを繰り返したりするのではないでしょうか?

 

組織や自分自身が確実に前に進んでいくためには、一見、前に進んでいないように見えるのかもしれませんが、足を止めて「これまでのやりかたは間違えていなかっただろうか?」、「あのときの失敗は、どうすれば防げたのだろうか?」などと、こまめに振り返る必要があると思うのです。

 

 

ワッチ【第3回】(加工済み) 
 

 

 

 

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