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堀井亜生【第四問】病院で無理な要求をしてくる患者さんを説得したい – 堀井弁護士流 相手の心を知る分析術

堀井 亜生

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<第四問>病院で無理な要求をしてくる患者さんを説得したい

【第四問】悩む女性

開業医です。
薬をもらうために長く通院している60代男性の患者さんが、「いつも診察までの待ち時間が長すぎるし、その割には診察も短い。診察なしで、薬だけ出してほしい」と言ってくるようになりました。

薬を出すには必ず診察をしなければいけないと説明しても納得してもらえず、来院するたびに受付や待合室で大きな声で文句を言うようになりました。他の患者さんも迷惑そうにしており、どうしていいか困っております。どうしたらこの患者さんを説得できるでしょうか。

相談者:川田川美さん※・病院経営/皮膚科医師・46歳

※相談者は架空の人物です。

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堀井亜生弁護士

診察をせずに処方箋を発行することは、医師法第20条によって禁じられています。したがって、この患者さんがどれだけ強く希望しても、医師はこの要求を聞くことができません。 では、法律で決まっているから無理だと説明しても納得してもらえない場合は、どうすればよいでしょうか。

解説

法律で決まっているから無理だと説明しても納得してもらえない場合は、患者さんの心理を推測して、別のアプローチからの解決を図るとよいでしょう。

STEP.1 要求の裏にある不満を特定する

患者さんは診察なしで薬をもらいたいと言っている。でも法律で決まっているからそれはできない。それがわかってもまだ納得していただけないのは、なぜなのでしょうか?

可能性の一つとして、この患者さんは薬をもらいたいから不満を言っているわけではなく、裏にはまた別の不満があって、それが結果として「診察なしで薬を出してほしい」という要求につながっているのではないでしょうか。では、裏にある不満とは何なのでしょう? もう一度、患者さんの言っていることを確認してみましょう。

「いつも診察までの待ち時間が長すぎるし、その割には診察も短い。診察なしで薬だけ出してほしい」
と言ってますね。 ――――待ち時間が長い、なのに診察が短い。だから薬だけ出してほしい。 このようなプロセスで「薬だけ出してほしい」と言うようになってしまったのですから、「法律で決まっているからそれは無理です」と説明しても、出発点となっている『待ち時間が長いこと』『診察が短いこと』に対する不満が解消されず、病院に来るたびに文句を言うようになってしまったと考えられるわけです。

STEP.2 具体的な対策ではなく、心理的なケアを心がける

そこで、『待ち時間が長いこと」『診察が短いこと」に対するケアをするように心がけてみましょう。

まず、『待ち時間が長いこと』。

これは各病院のシステムの問題ですし、他の病院と比べて待ち時間が長いのかどうかはこの質問からはわからないので、簡単に改善できることではありません。しかし、ポイントは『待ち時間が長いこと』ではなく、『この患者さんが待ち時間が長いと感じていること』にあります。ですので、心理的な部分でのケアをすることで十分に効果が見込めます。人は、待ち時間の目安がある状態で待つのと、目安がない状態でただ待つのとでは、後者の方が待っている時間を長く感じます。 そこで、この患者さんがいらした時に、診察までどのくらいかかりそうかを教えてあげるようにするとよいでしょう。大体何分ぐらい待つのか、もしくは何人目に呼ばれるのかを伝えるだけでもかなり効果があるはずです。
受付で、「今日はお急ぎですか?」「何時までならご都合は大丈夫ですか?」という風にコミュニケーションを取って不満を解消するのもよい方法でしょう。一番重要なのは、その患者さんを待たせていることに関して、病院が何か対策を取ろうとしていると伝えることです。そうすれば、「自分の不満をわかってくれた」と思ってもらえるようになるでしょう。

次に、『診察が短いこと』。

これも、実際に診察が短いかどうかより、この患者さんが『診察が短いと思っていること』、さらにその結果として診察が不要だと思っていることが重要です。 なので、ただこの患者さんの診察時間を長くするだけでは不十分と言えるでしょう。

診察は本来、薬の効き目や症状の変化について話す重要な場です。 でも患者さんがそう思っていないということは、医師の聞き取りが不十分で、患者さんが自分の状態を伝えられていないことが考えられます。だから、そんな診察ならいらないと思うようになったと考えられます。診察時に聞き取りを重視するようにすれば、薬を飲んでいることによる症状の変化や、薬を飲んでいることについて患者さんがどう思っているのかを知ることができます。

薬が効いていないのかもしれないと思っていたり、治療が長引いて薬代を払うのが大変だという事情を聞き取れることもあります。医師が必要だと思うことを問診で聞くだけではなく、もっと漠然とした患者さんの気持ちや事情を知ることも、治療する上では非常に大事なことです。 それを見逃すことで、患者さんの不信感がどんどん大きくなって、他の患者さんの前で不満を言うような事態につながってしまったのでしょう。

STEP.3 今後同じようなケースを起こさないための対策を考える

上記のようなケアを行ってこの患者さんの不満が解消したとしても、他の患者さんがまた同じような不満を持つ可能性があります。そうならないように、病院として今後の対策を考える必要があるでしょう。

まず、診察時間の短さについては、先ほど述べたように医師が積極的に聞き取りを行うことで、診察が短いことによる不満をカバーすることが可能です。

次に、待ち時間の長さについて。 これについては、受付にいるスタッフから、待合室の患者さんが感じている不平不満を報告してもらうようにしましょう。そうすれば、待ち時間の長さが患者さん全体にとってのストレスとなっているかを知ることができます。通常の患者さんの不満は、受付スタッフや看護師にまず伝えられます。しかし、実際に患者さんが不満を口にしていたとしても、受付のスタッフがその場で対応してしまうと、その不満の内容は医師(経営者)のところまで上がってこないことになります。 もしそういった不満の声が他の患者さんからも多く上がっているようなら、先ほどのように待ち時間の目安を案内したり、もっと具体的に待ち時間を減らすための方法を病院のスタッフ全体で考える必要があります。

まとめ

患者さんの不満は、よりよい病院経営のためのシグナルととらえよう。

患者さんがどういったことに不満を感じているのか、どうしてほしいと思っているのか。 それを知るためには、医師とスタッフの連携が不可欠です。 不満の内容をスタッフ全体で共有できれば、効果的な対策も考えやすくなりますし、今回のような大きな問題になってしまう前に防げるようになります。 今回のケースは、そういった病院内の問題を改めて見直すためのよいシグナルと言えるでしょう。 これをきっかけに、医師とスタッフの連携を改善することができれば、病院にとっても患者さんにとっても、ベストな病院経営ができるようになるはずです。

【第四問】ワンポイントアドバイス

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職場コミュニケーション活性化講演会、医療現場課題解決講演会、などができる堀井 亜生弁護士法人 フラクタル法律事務所 代表弁護士
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