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堤康之 公認会計士が書く!ついつい誰かに話したくなるお金のこと

堤康之【第5回】103万の壁、130万の壁 – 公認会計士が書く!ついつい誰かに話したくなるお金のこと

堤 康之

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2015年08月03日

『103万の壁、もしくは130万の壁』ってよく話には聞くけど正確に理解できていますか?

『103万の壁、もしくは130万の壁』って言葉はよく聞きますが、正確に理解をしていない人も結構多いですよね。
今後の制度変更の話がニュースとなり、最近改めて聞かれることも多いので、いったいどんな壁なのか整理しておきましょう!

子供が大きくなりそろそろ仕事を再開したいと思っている主婦には非常に重要な話です。
正社員で復帰してバリバリ働くぞ!という人には関係ありませんが、まずは空いた時間にパートで働いて世帯収入を増やしたい!と考えている夫婦には、賢く効率的に働くためのひとつの指標となってくるものです。

ポイント

サラリーマンの妻が一定の年収を超えずに働く分には、税金や社会保険上の優遇措置が受けられるので、そのメリットと優遇が受けられる収入金額を把握しておくこと!」です。

まず『103万の壁』って何についての話なのでしょうか?

103万円は税務上の扶養の範囲のことを指しています。
どういうことかというと、専業主婦がパート勤めを始めれば、とうぜん稼いだ収入に対して税金がかかってきますよね。
しかし、年間の収入の総額が103万円以下であると、

① 税金の計算上、所得が所得控除の範囲内となり0円、所得税を払わなくて済む。
空白

別に覚える必要はありませんが103万円の根拠は、所得税の計算では給与所得者(アルバイトもこれに含まれます)は、収入から65万円の給与所得控除、38万円の基礎控除などの各種控除を行った後の所得に対して税金がかかるので、年収が103万円であれば65万円の給与所得控除と38万円の基礎控除を差引けば所得は0となり所得税は0円となるということです。

 

②夫の所得税について、夫が配偶者控除という控除を受けることができ夫の所得税が減額される。
空白

配偶者の給与収入が年間103万円以下(給与所得控除65万円+基礎控除38万円の範囲内)であれば、夫は配偶者控除を受けることができます。配偶者控除とは配偶者がいる人に対して税金面での配慮をしてくれているもので、夫は自身の所得税の計算上、給与所得控除65万円や基礎控除38万円の他に38万円の配偶者控除を受けることができ、その控除分の所得税が少なくてすみます。

 

このように、妻が働き始めても年収が103万円以下であれば、本人に所得税はかからないし、夫の配偶者控除も妻が働く前と変わらず適用されるので、税金上ダブルでお得!ということになります。

また、その他にも

③夫の会社の家族手当の支給要件として、妻の年収が103万円以下(= 税務上の扶養の範囲内)と定められているケースが多く、夫が妻分の家族手当の支給を受けられるケースがあります。但しこれはあくまでの会社個々の制度の話であり、最近では家族手当を廃止する企業も増えてきているので、自社の制度がどうなっているのかを確認しましょう。

このように、年間のパート収入が103万円を超えるか超えないかによって、①自分の所得税、だけでなく、②夫が配偶者控除を受けられるか、③会社から家族手当が受けられるかなど、世帯での手取り収入が大きく変わってくるため、主婦がパートで働くなら103万円以内に抑えて働いたほうがお得!という考えが『103万の壁』という一つ目の壁です。

ただし、夫の所得税の計算(②)に際しては、103万を超えたら38万円の控除が全てなくなるのではなく、103万円超~141万円以下の収入であれば38万円の控除額がゆるやかに減っていくよう配偶者特別控除という手当てがなされており、壁はゆるやかになっています。

次に『130万の壁』とはどういうことでしょうか?

『103万の壁』が税法上の扶養の範囲であるのに対して、『130万の壁』は社会保険(年金や健康保険)でいう扶養の範囲です(両者で扶養の範囲に該当する金額が異なっているので壁が2段階になっています)。

サラリーマンの妻は自分で年金は支払っていませんし、また健康保険もご主人の健康保険に自ら加入していますよね。

しかし、年収が130万円を超えると、ご主人の扶養の範囲から外れてしまい、自ら年金や健康保険に加入する必要がでてきます。パート先の社会保険に加入できればよいのですが、勤務時間等による制約(概ね正社員の3/4以上の勤務時間が必要)などがあり必ず入れるものでもなく、自分で国民年金、国民健康保険に加入するとなると毎月の出費はかなりのものとなってきます。

ご主人の社会保険に加入したままで働くことができる年収の範囲が130万円であり、『130万の壁』という二つ目の壁です。

さて、これらの結果から主婦のパートは103万円以内にすべきなのでしょうか?

これまでの話を整理すると、お得に働くには、主婦のパートは年間103万円以内、それを超えても130万円以内で抑えるということが、世帯での手取り収入を一番効率的にする方法だと考えられます。

実際にシュミュレーションをしてみると、家族手当や夫の年収等によりかわってくるものの、現行制度の下では103万円を超えて稼いだ場合、もちろん総手取り額は増加するものの税金等が増加することにより、手取り額の時間単価は下がってきます。

そして130万円を超える場合は、社会保険の影響が大きくでてくるため、将来もらえる年金は増えるものの、現在の手取り額はむしろ減ってしまうのでいっそ150万円~160万円以上を目指して働いたほうがお得という結果になります。

【103万の壁、130万の壁】

妻の年収 妻の税金 夫の税金 社会保険
103万円以下 所得税は0円 配偶者控除が適用される 夫の社会保険の範囲内
103万円超 収入に応じて
所得税がかかる
配偶者特別控除が
適用される
130万円以下
130万円超 自身で社会保険加入が必要
141万円超 配偶者の控除はなし

 

いくら手取りが増減するかは個々の条件によって変わってきます。ですが例えば配偶者控除38万円がある場合と無い場合を考えてみただけでも、夫の収入が500万円だとすると配偶者控除が使えなくなると、夫には所得税と住民税で凡そ11万円税金が多くかかることになってしまいます。

現在、このような103万もしくは130万の壁が働きたい女性の労働に対する意欲を下げているという指摘がなされ(これだけが理由ではないと思いますが)、これらの壁をなくすよう制度改革を行う話が持ち上がっています。

税金面では配偶者控除を大幅に変更する案が検討されていますが、まだまだ紆余曲折ありそうです。また社会保険では、従業員501人以上の会社でパートの社会保険の加入条件が大幅に緩和される制度が2016年10月より始まるなど(対象会社では社会保険の加入条件が年収130万以上から年収106万以上に下がります)、今後の制度変更にも十分注意してパート収入の上限額を考える必要があるといえるでしょう。

でも、ご主人はきっと私と同じことを考えているかもしれませんね。
『そんな小さな壁なんか気にしないで、ばりばり働いて俺より稼いで、どうか俺に楽をさせてくれ~!!』って。

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