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堤康之 公認会計士が書く!ついつい誰かに話したくなるお金のこと

堤康之【第7回】個人事業主必見!節税のススメ – 公認会計士が書く!ついつい誰かに話したくなるお金のこと

堤 康之

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2015年11月09日

個人事業主は、節税をしながら老後のマネーを蓄えよう!

“個人事業主の節税”と聞くと、自営業者の皆さんは、『いかに家計費を、理由をつけて事業経費にいれてしまうか!』ばかりを考えていませんか?

さて、今回は節税の話ですが、税金を減らしながらうまく余剰資金を運用し、老後の資金を蓄えていこうという賢いお金の動かし方のお話です。

 

税金の仕組み

今更ですが、自営業者の皆さんは、自分の税金がどのように計算されているか、当然お分かりですよね?もしかして、税理士に任せっきりですか?それでは賢い運用以前の問題です。

担当の税理士も、あなたが大金持ちのクライアントでしたら、あれこれと節税スキームを提案してくるでしょう。でも本来は確定申告を代行するのが主な業務なので、まずは自分で理解することから始めましょう。

色々とある税目でいちばん重要なのが『所得税』。

自営業者の所得税は大まかには以下の計算になります。

+収入(売上)

▲支出(経費)


=事業所得

所得控除            (事業所得から差引ける控除額)

医療費控除         :支払った年間の医療費が一定額を超える場合

社会保険料控除       :健康保険料、国民年金などの社会保険料の支払

扶養控除          :扶養親族がいる場合

小規模企業共済等掛金控除  :小規模企業共済、確定拠出年金の支払

生命保険料控除       :生命保険、個人年金保険、介護医療保険の支払

寄付金控除         :国や地方公共団体への特定寄付金

その他           :基礎控除、配偶者控除、地震保険料控除 etc


=課税所得①

?

(①×税率)=所得税額

税額控除            (算出税額から差引ける控除額)

住宅借入金等特別控除    :住宅ローン控除

その他           :配当控除、外国税額控除 etc


=納税額

 

税金を少なくするには、要は▲のところを大きくして、最後の納税額を小さくすれば良いわけです!

まず最初に、支出(経費)の▲です。支出自体を大きくすると、そもそもの利益が減少してしまうので、支出を無駄に増やすわけにはいきません。そこで事業経費ではなく、生活に使う家事費を事業経費に入れてしまおうと画策するわけですが、あまり派手にやると税務調査で痛い目にあいます。

では次に、今回の本題である、所得控除の▲、税額控除の▲をうまく活用して大きくすることを考えましょう。

所得控除と税額控除をうまく利用しよう!

所得控除とは、税率を掛ける前の所得金額からマイナスできる各種控除制度であり、課税所得を小さくすることで、税額を少なくすることができます。

税額控除とは、算出した税額から直接マイナスすることができるので、より減税インパクトは大きいですが、それほど使える項目は多くありません。

具体的な控除項目を見ていきましょう。

(医療費控除)

医療費控除では、年間の医療費の額が10万円(もしくは所得が200万円未満の場合はその5%)を超えた場合に、その超えた額を所得から控除することができます。(最高200万円)。
本人だけでなく、家族分の年間の医療費を合算して控除することができます。よって共働きの場合などは、個人に分散せずに、税率の高い(節税効果の高い)人の所得からまとめて控除したほうが得になりますね。また、病院にかかった場合だけでなく、市販の薬を購入した場合も医療費控除の対象となりますので、お忘れなく。

普段から持病があり、定期的に病院にかかっている方は、習慣化しており毎年漏れなく行っているようですが、逆に普段あまり病院にかかっていない人が、突然病気や怪我で高額な医療費がかかってしまい、医療費控除を行うために、あわててその他の領収書を探したけど既にゴミ箱行き!という話はよく耳にします。

普段から医療費関係の領収書は、家族分をまとめて年末までとっておくクセをつけましょう。

チェック1
 

(社会保険料控除)

社会保険料控除は、健康保険や年金などを支払った際の控除で、その支払額全額が所得控除にできます。基本的に決まっている額を支払わなければいけないもの、という感覚なので、この項目を増やすという感覚はないかもしれません。でも、可能性はあります。

社会保険料控除は、「生計をいつ ) にする」配偶者や親族の社会保険料を納付した場合に、支払った本人の社会保険料控除とすることができます。

例えば、大学生の息子の国民年金を親が替わりに支払っている場合、確定申告により親の社会保険料控除に加えることができます。(忘れている人は今年からすぐ実行を!)。「生計を一にする」家族であればよいので、親の社会保険料を支払っている場合も同様ですね。

チェック_2

(扶養控除)

扶養控除は、扶養している親族がいる場合に控除が受けられる制度です。よく誤解されるのが、扶養親族の条件としての「生計を一にしている」ということは、同居が条件ではなく、別居していてもOKということです。

親が高齢になり、仕送りにより生計をたてている場合、別居していても「生計を一にしている」親族として扶養控除の対象となります。(70歳以上の別居の親で48万円の控除)。「仕送りを〇円以上しないといけない」というような金額による規定はありません。ただ、親の年間所得が38万円以下※でないと扶養されているとはいえず扶養親族にはできません。

※親の年収が年金収入だけの場合、65歳未満であれば年金年収108万円以下(年金所得控除70万円を引くと所得38万円)、65歳以上であれば、年金年収158万円以下(年金所得控除120万円を引くと所得38万円)が扶養親族の範囲になります。

チェック3
 

(小規模企業共済等掛金控除)

小規模企業共済等掛金控除は、あまり聞き覚えがない控除項目かもしれません。でもこの項目には大きな可能性があります。個人事業主が、小規模企業共済に入っている場合、または個人型の確定拠出年金を行っている場合には、その支払額の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となり、所得控除額としてはかなり大きなものとなります。

小規模企業共済は、退職金のない個人事業主にとっての『退職金制度』のようなものです。(詳しくは中小企業基盤整備機構のHP参照)。毎月掛金を拠出し、事業を廃止した場合などに、一時金または分割で共済金を受け取ります。最高で年間84万円の掛金の拠出が可能です。(要は84万円の所得控除が可能)。

個人型の確定拠出年金は、いわゆる『401k年金』のことで、自営業者であれば、最高で年間81万6千円の拠出が可能です。(要は81万6千円の所得控除が可能)。

私も個人事業主であり、職業柄クライアントに聞かれることも多いので、自分自身もいろいろな制度を試しています。

退職金代わりに小規模企業共済を活用しており、効用は自分で銀行の積み立て型の商品に入るのと変わらないのですが、市場金利の低い現状では、低い金利より控除を使った節税効果の方が大きくなっています。

同様に確定拠出年金も活用しています。確定拠出年金は、本来は将来の年金として投資信託・預金などのバランスを考慮し、長期運用を前提に積極運用・安定運用を考えて運用商品の選択を行うものなのですが、私の場合は控除による節税目的だけで使用しています。ノーリスクの安定預金商品などで運用し、利息は微々たるものなので、管理手数料分が毎年目減りするのですが、節税効果を考えれば十分効果を発揮しています。本当は、投資信託商品での運用を考えたいのですが、確定拠出年金での運用では、選択できる商品数が少なく、長期運用は普通に証券会社の口座で運用していくほうが、私の場合は目的に叶っています。

いずれにせよ、この項目で最も需要なポイントは、

『資金運用商品の選択条件に節税効果を加味する』

ことなのですが、あくまでも余剰資金の運用枠があれば積極的に活用する!ということで、資金が長期間固定化されますので将来の資金計画の検討を忘れずに!

チェック4
 

(保険料控除)

生命保険料控除は、一般生命保険料、介護医療保険控除、個人年金保険料控除の3つに分かれ、特定の計算式により、それぞれの所得税控除の限度額が4万円、3つの控除額合計が12万円になります(平成24年以降に契約した「新契約」の場合)。

控除額はそれほど大きくはありませんが、保険は長期に渡って払込みを行うので、トータルするとかなりの節税効果が発揮されます。生命保険や養老保険などに入っていて、保険料控除を使っている人は多いのではないでしょうか。しかし、控除枠を考えて保険に入るか否かの検討をしている人は少ないかもしれません。

将来の退職後資金の準備をどのようにしていくか!公的年金制度だけでは心もとなく重要なトピックスとなっていますが、貯蓄型預金や確定拠出年金の他に個人年金保険が候補にあがるかと思います。

生命保険等、もしもの時の保障を目当てに入る保険では、控除枠は保険の本質的な話ではないのであまり考慮することはしませんが、個人年金保険や養老保険では、単なる商品設計上の利回りだけでなく、節税の効果も見越して利回り計算をする必要があり、自分の保険料控除枠があといくら使え、節税効果がどのくらいあるのかを合わせて考えないと正しい利回りの判断ができません。

チェック5
 

税額控除)

最後に税額控除ですが、こちらはあまり特別なアイディアはありません。

住宅ローン控除がもっとも一般的なもので、新規に住宅を購入した方などは、当然に控除枠をフルに活用していると思います。

その他には、通常の控除枠とは少し異なりますが、『ふるさと納税』は非常に楽しく利用し甲斐がある制度です。控除枠としては寄付金控除の仕組みを使うことになります。実際には、寄付という外部への支出を行うので、節税効果があるわけではないのですが、うまく使えば、2000円の手数料相当額で、寄付先の市町村から特産物等のお礼の品をいただけます。

私の場合は、毎年全国の酒どころに寄付を行い、地ビール・地酒をお礼の品でいただいており、通常消費する酒代の一部をふるさと納税で賄っているので、その分メリットを享受しています。まぁ、そもそも年間消費量が大きいのでほんの一部にしかならないのですが。

ふるさと納税については、以前書いたコラムでも、ご紹介しておりますので、興味のある方はぜひご覧くださいませ。

 

以上、全ての人にあてはまる訳ではありませんが、所得控除をうまく活用する方法をお伝えしました。

個人事業主の方が、老後に備えて長期資金を運用する際には、ご自身の確定申告書を見て、控除枠をうまく活用できているかを再検討してみてはいかがでしょうか。

また、個人事業主ではなく、サラリーマンの方であっても、所得控除を漏れなくうまく活用することで、税金を減らすことができますので、年末に向けて見直しをしてみましょう。

控除がとれた場合には、浮いたお金で景気よく一杯!や、年末ジャンボで更に一攫千金!・・・などせっかくの控除を全て使ってしまわないように注意しましょう。

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