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伊藤邦雄氏インタビュー「理念は企業のぶれない軸」 一橋大学大学院商学研究科 特任教授 伊藤邦雄

伊藤邦雄【第2回】理念を体現できる人材を採用 – インタビュー「理念は企業のぶれない軸」

伊藤 邦雄

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【コラムジャンル】

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2018年03月13日

理念は企業のぶれない軸

「理念に沿わないことが出てきたときには、たとえそれが上司であっても異を唱え、議論ができる風土がなければいけない」

東京証券取引所が主催する「企業価値向上表彰」において、選考委員会の座長を務めるなど、数多くの企業経営の分析実績を持つ、一橋大学大学院商学研究科の伊藤邦雄教授。そんな伊藤教授に、「経営理念」が企業やそこで働く人々にもたらす価値などについて、先駆的な企業の事例を踏まえながらうかがった。

岩崎知佳 ≫ インタビュー 田村知子 ≫ 文 櫻井健司 ≫ 写真

(※本記事は、2015年10月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)

理念を体現できる人材を採用

―理念が企業のぶれない軸になるということですね。理念は人材の採用にも大きく関わるように思います。

そうですね。私が社外取締役を務める三菱商事の数年前の株主総会でも、大変印象的なシーンがありました。会場から「三菱商事はどんな人材を採用しているのか」という問いかけがあった際、人事担当役員がすぐさま「三菱商事は(創業以来の社是である)『三網領』に基づく採用を行っています」と答え、三網領について滔々(とうとう)と語り出したのです。つまり、会社の一員となる以前から理念を共有し、その理念を体現できるであろう人を採用しているんですね。

―理念にこだわり、浸透させていくうえでは、どのようなことが大切でしょう。

伊藤邦雄 理念は企業のぶれない軸
理念の浸透には、理念を拠り所とした「書生っぽい」議論を重ねていくことが大事。

経営者がコミットを示すことが重要ですね。ボトムアップで理念を浸透させるのはなかなか難しいでしょう。

例えば、株式会社セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長は一貫して「変化への対応と基本の徹底」というメッセージを発信し続けています。これを徹底する取り組みの一例が、各コンビニエンスストアのオーナーへの経営支援を担うOFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー)との「FC会議」です。鈴木会長は全国で活動するOFCを隔週1回、四谷の本社に集めて、事例や経験を共有し、「変化への対応と基本の徹底」という理念に照らして話し合う場を設けています。優に1000人を超えるOFCを隔週1回、一堂に集めるには相当の費用や労力もかかるはずですが、鈴木さんは理念の浸透に重きを置いているんですね。

さらに、経営者の姿勢としては、「寝ても覚めても同じことを考え、手を変え品を変え同じことを繰り返し伝える」ことが重要だと思います。

この要諦に長けている経営者の1人が、キヤノン株式会社の御手洗冨士夫会長兼社長です。御手洗さんも毎月1回、本社に部長職以上を集めて幹部会を実施しています。参加者に話を聞いてみると、御手洗さんはいつも様々な視点で話をされるそうなのですが、持ち帰って考えてみると、真のメッセージはずっと変わっていないことに気づくのだそうです。同じ話を同じように繰り返すだけでは聞くほうは飽きてしまいますから、「手を変え品を変え」、でも「同じことを繰り返し伝える」ような、コミュニケーション上の工夫が必要なんですね。

私は経営の95%はコミュニケーションだと思っています。企業風土が悪化するのは、コミュニケーションの目詰まりが原因でしょう。理念が浸透しているようでしていないような企業では、「書生っぽい」議論をしづらい雰囲気があるように思いますね。

―「書生っぽい」というのは?

言い換えると「青くさい」といった言葉になるでしょうか。理念を持ち出して議論をしようとすると、気恥ずかしさが先に立つのか、相手は「この人は何を言い出すのだろう?」といったうがった目で見る。自分自身も、そう思われるのが嫌だという感情が邪魔をして、正面から議論できなくなってしまうのです。

しかし、それではやはり、ダメなんですよね。理念に沿わないことが出てきたときには、たとえそれが上司であっても異を唱え、議論ができる風土がなければいけない。理念の浸透には、理念を拠り所とした「書生っぽい」議論を重ねていくことが大事だと思いますね。

講師紹介

伊藤邦雄 理念は企業のぶれない軸

伊藤邦雄(いとう・くにお)
一橋大学大学院商学研究科教授 一橋大学CFO教育研究センター・センター長。1951年生まれ。1975年一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院商学研究科長・商学部長、一橋大学副学長を歴任。多数の企業で社外取締役を務める。『新・企業価値評価』『新・現代会計入門』『危機を超える経営-不測の事態、激変する市場にどう対応するか』(日本経済新聞出版社)など、著書多数。

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