江口克彦【第2回】人を育てることをあきらめてはいけない。批判する人を大切にせよ – 人間観なきところに人は育たず。

松下幸之助と23年過ごして辿りついた人材育成の哲学 人間観なきところに人は育たず。 株式会社江口オフィス代表取締役/経済学博士/前参議院議員/PHP総合研究所元代表取締役社長/松下電器元理事 江口克彦

江口 克彦

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2018年05月01日

人間観なきところに人は育たず。

「人というのは、ちょっとしたきっかけで態度や仕事ぶりが変わるものです。」

江口克彦には3つの顔がある。1つ目は、政治家としての顔だ。現在、「みんなの党」の最高顧問をつとめ、「道州制」実現を目指して精力的な活動を続けている。2つ目は、松下幸之助のもとで23年間薫陶を受け、その哲学を広めてきた著者・講師としての顔。そして、3つ目は、PHPグループを永年率いた経営者としての顔。江口は慢性的な赤字体質だった同グループを短期間で長期的な黒字経営に転換させた実績を持つ。これらの経験から導き出された「人材育成の哲学」を中心に聞いた。

本間貴史 ≫ 文 櫻井健司 ≫ 写真

(※本記事は、2013年10月1日発行のノビテクマガジンに掲載された記事を再構成しました。)

人を育てることをあきらめてはいけない批判する人を大切にせよ

もうひとつ、人材育成という視点で教育担当者の方々に伝えたいのは、「人を育てることをあきらめてはいけないこと」です。大勢の社員と接していると、「なぜ、この人は素直に言うことを聞かないのか」、「同じ環境なのに、なぜこの人だけ成長しないのか」という人も中にはいるかもしれません。しかし、だからといってあきらめてはいけません。人というのは、ちょっとしたきっかけで態度や仕事ぶりが変わるものです。

私自身の経験でいうと、PHPの経営に関わるようになったのが、36歳の若さだったこともあり、一部の社員から猛反発を受けました。とくに2~3名の社員は、あからさまに反抗的な態度をとっていた。そこで私は、半年後、彼らをあえて部長職や業務の責任者といった要職につけました。まずは私から一歩踏み込むことが大切だと考えたのです。それ以来、彼らは私のことを素直に受け入れるようになりました。もし、彼らを遠ざけてしまったら、ますます反発するようになったでしょう。それでは、会社全体に悪影響を及ぼしてしまう。この「自分を批判する人を大切にする」手法も、実は、松下幸之助を見習ったものです。

松下幸之助にも少数ですが、批判者がいました。「あの新聞記者があちこちで悪口を言っている」「あのお坊さんがいつも批判している」といった噂が本人や私の耳に入ることもたまにありました。松下幸之助は、このような批判者を会食に招いて、「私に反省すべきことはありまへんか」と尋ねたりするんですね。相手がある部分を批判すると、「そうでっか。気をつけないとあきまへんな。まだ他にありまへんか」と次の批判を促す。その批判が終わると、また次の批判を促す。これを繰り返しているうちに、批判者だった人が次第に「松下さんというのは立派な人ですな」と言うようになりました。

たとえば、仮にあなたが立案・運営した研修に対して、「あんな研修は意味がない」という人がいたら、あえてその人にどこが悪いのかを尋ねてみたらどうでしょう。批判をどこまでも聞き出し、「なるほど、勉強になりました」と言ったら、逆にその人はあなたの味方になってくれるかもしれません。加えて、リーダーやリーダー候補者の方々には、あきらめないことの大切さを伝えていただきたい。私は社長時代、育てることをあきらめた社員は一人もいません。すべての社員が最終的にはやる気になってくれたと思っています。

リーダーにとって「熱意」くらい大切なものはない

ここまで人材育成そのものについては、「雑談が大事であること」「あきらめてはいけないこと」が大切さであると話してきました。では、次にリーダーの人材育成についてはどのように考えたらよいのか。

リーダーに必要なすべての要素をあげれば、本一冊分くらいの話になります。その数多くの要素の中で、もっとも大事なものをあげれば、「燃えるような熱意」ということになるでしょうね。松下幸之助はこれを重視していましたし、私自身、永年の経営経験からリーダーにとって「熱意」くらい大切なものはないと感じました。

「熱意とはずいぶん当たり前の話だな」と思う方もいるかもしれませんが、私は「熱意」を重視する経営によって、PHPを長期黒字経営に導いてきました。私が事実上、経営を引き継いだとき、PHPは年間売上げが約9億円の赤字の会社だった。それが次の期からすぐ黒字転換させ、その後、私が経営に携わっている間ずっと黒字だった。退任するときには、内部留保が約80億円になっていました。

松下幸之助自身、PHPがここまでの成長を遂げるとは想像していなかったようです。亡くなる一ヶ月前に松下幸之助のもとにPHPの売上推移を報告しにいったとき、「江口くん、PHPがこんなに大きくなるとは思わんかった」と涙を流されたことが今でも忘れられません。この言葉は、私にとって生涯最高の褒め言葉だと思っています。

講師紹介

江口克彦(えぐち・かつひこ)
PHP総合研究所(現PHP研究所)元社長みんなの党 最高顧問/参議院議員1940年(昭和15年)、愛知県生まれ。慶応義塾大学・法学部卒業後、松下電器産業入社。昭和42年、PHP総合研究所へ異動。以後、松下幸之助の側で23年間にわたり、薫陶を受け続ける。同社の常務取締役、専務取締役、副社長などを経て、平成16年、社長に就任。平成21年に退任後、参議院議員となる。

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