宇都出雅巳【第9回】パンツを脱ぐ勇気とマネジメント – 速読勉強術のプロ まとめてグルグル10冊書評

速読勉強術のプロ宇都出雅巳のまとめてぐるぐる10冊書評

今回は

今回取り上げるのは、ちょっと驚くタイトルの『パンツを脱ぐ勇気』(児玉教仁著 ダイヤモンド社)と、大ベストセラーとなった『もしドラ』こと『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(ダイヤモンド社)で再び注目されたドラッカーの『マネジメント [エッセンシャル版]』(P.F.ドラッカー著 上田惇生編訳 ダイヤモンド社)。

何の共通点もない(出版社は同じですが)この2冊ですが、意外にも共通点がありました。『パンツを脱ぐ勇気』のサブタイトルは何かというと、実は「世界一“熱い”ハーバードMBA留学記」。かの有名なハーバードビジネススクールに留学した体験(そのものではないですが)なのです。

そして、ドラッカーといえば、「経営学の父」とも呼ばれ、ニューヨーク大学のビジネススクール(ちなみに私の母校です)でも教えた経験があるので、ビジネススクールという共通点はありますね。

ただ、あのドラッカー大先生が「パンツを脱ぐ」ことは想像できず………。いったい、このハーバードMBAの児玉教仁という人は何者か?というのは否が応でも知りたくなるわけです。

そこでまず、『パンツを脱ぐ勇気』の目次を見てみると……こんな章立てです。

パンツを脱ぐ勇気

ぐるぐる_【第8回】1

なかなか面白そうな章タイトルが並んでいますが、なんといっても興味を引くのは第9章の「パンツを脱ぐとき」。とはいえ、まずはまえがきがないので、「プロローグ」を読んで、この本の全体像をつかんでみることにします。

プロローグ-六本木の夕べ の冒頭の文章はこれでした。

「僕は、ハーバード・ビジネス・スクールの宴会部長である。」

「ハーバード・ビジネス・スクール」と「宴会」。なんとも不調和な組み合わせに驚きつつ、ざっくりとプロローグをめくっていくと、ビジネススクールの学生が日本に研修旅行に来る「ジャパントリップ」における宴会ということがわかります。

私は、ハーバードではありませんが、ニューヨーク大学(NYU)ビジネススクール在学中に、まさにこのジャパントリップを企画し、ツアコンまで務めた経験があるので、そのストックからサクサクと読み進められました。

このように同じような経験というストックがあると、速読できる大きなリソースになる反面、誤読が起きやすいほか、自分の経験と本に書かれているものと比べてあれこれ価値判断が起きて、それが速読のブレーキとなるので注意が必要です。

具体的にどう注意するかというと、自分の経験はわきにおいて、相手の経験がどんなものだったかをとにかくそのまま受け止めようという姿勢になることです。

なお、延々とジャパントリップの話が続いたところで、プロローグの最後のページになってこんな文章が・・・

「ジャパントリップが終わった後の約四か月にわたる僕の夏休みの戦いの話なのだ」

ということで、まさにプロローグで本題にはまだ入っておらず、メインは四か月にわたる夏休みの戦いなんですね。

とりあえず、メインは飛ばして一気に「エピローグ――広島での髭ダンス」へ。すると、また、ジャパントリップの話へ。正直、プロローグとエピローグだけを読んでいると、ハーバード・ビジネス・スクール仲間の内輪話を聞かされているようで、なんとも面白くありませんでした……(私が率いたニューヨーク大学のジャパントリップの参加者は10名にも満たない人数だったの対し、ハーバードのそれの参加者は140人! ちょっとコンプレックスを感じただけかもしれません)

こういった物語は、ざっくりざっくりくり返しながらだんだんと細かいところに入っていく私の読み方には向いていないかもしれません。結末を知ったら面白くないですからね。

また、これからこの本を読む人にも内容を紹介しすぎると、物語の感動を失わさせますからこれぐらいにしておきましょう。

ただ、最後に気になる「パンツを脱ぐ勇気」とはどういうものかを。ちゃんと章タイトルにもなっていますから、そこを読んでみると、さすがMBA、整理してわかりやすく書いています。ちなみに、本当にパンツを脱ぐ、とういことではありません……。

「僕がつかんだアメリカや国際社会での生き方、それは、「パンツを脱ぐ」ということ。 当然、物理的にパンツを脱ぐということではない。 心にまとっているもの、自分で無意識に防衛しているものをすべて脱いでとっぱらってしまうことだ。 自分の弱いところ、恥ずかしいところ、くだらないプライドをすべて脱ぎすてて、素の自分、 自分の情熱を臆面もなくさらけ出してしまうということだ。結局、真実をさらし自分の価値観にのっとって生きているアメリカ人は、いい意味で日本の幼稚園児みたいなものだ。無垢の、自分の気持ちをべろんと出していきている。 (中略) 事実アメリカ人はパンツを脱いだ人間を馬鹿にしなかった。 情熱を真正面から受け止めてくれる熱い奴ら、それがアメリカという社会だった。すべてをさらしてぶつかっていく者をがっちりとうけとめるところだった」-本文引用-

自分をさらけ出す、鎧を脱ぐなんていう言葉で表現される、言ってみれば陳腐な人生訓ではありますが、これがあることで、ノンフィクションとしては粗っぽい、一個人のアメリカ体験記に締まりが出ています。

なお、この本のメインストーリーは、「バッファローウィング」という鶏手羽を使ったジャンクフードの全米選手権に挑戦し、優勝の栄冠を勝ち取るまでの道のりです。父親との約束、そして別れも織り交ぜながら、文字通り“熱い”「バッファローウィング」奮闘記なので、そちらは本をゆっくりじっくり読んでお楽しみください。

マネジメント

そして、もう1冊の『マネジメント』。
サブタイトルは「基本と原則」。まさに「マネジメント」なるものに真正面から取り組んでいる本です。

まずはいつもどおり、目次から。
大きく三部構成になっています。

ぐるぐる_【第8回】2

使命・方法・戦略。非常にスッキリとまとめられています。さらに細かくみていきましょう。

まずは、Part1 マネジメントの使命
「マネジメントの役割」という独立した節のあと、

ぐるぐる_【第9回】6

とあります。

マネジメントというと、すぐに企業、会社の経営を思い浮かべますが、公的機関の話もあり、さらには「仕事と人間」という哲学的ともいえるテーマが掲げられています。そして社会的責任。

今でこそ、企業の社会的責任が重視されていますが、そこに1章分割いているのはさすがです。

Part2に向かう前に、Part1をさらに細かく見てみましょう。

ぐるぐる_【第9回】7

第1章にある「企業とは何か」など、根本的な問いが投げかけられていますね。
ここの本文を見て、小見出しを拾ってみると、最初はこのように記されています。

企業=営利組織ではない

「え?」と驚く人が多いでしょう。ドラッカーは利益についてこう書いています。

「利益は、個々の企業にとっても、社会にとっても必要である。しかしそれは企業や企業活動にとって、目的ではなく条件である」

「条件ってどういうこと?」と思う人も多いでしょう。そうやって問いを持つことで、どんどんと本を読みたくなり、読んでいけるのです。
続く小見出しを挙げていくと……

・企業の目的
・マーケティング――顧客の欲求からスタートする
・イノベーション――新しい満足を生み出すこと
・生産性に影響を与える要因
・利益の持つ機能とは何か?

と続きます。

ここの節だけでもドラッカー・マネジメントの核心が含まれているともいえます。おそらく、「企業の目的とは?」「ドラッカーのいうマーケティングとは? イノベーションとは?」「生産性に影響を与える要因とは?」「利益の持つ機能とは何か?」という問いが頭の中をかけめぐり始めているでしょう。

ちなみに、ドラッカーが考える「企業の目的」とは、有名ではありますが紹介すると……

「企業の目的の定義は一つしかない。それは顧客を創造することである。」

そこから、マーケティング、さらにはイノベーションにつながっていきます。
そして、「生産性に影響を与える要因」ですが、本文を見ると次の6つの要因が挙げられています。

①知識
②時間
③製品の組み合わせ(プロダクト・ミックス)
④プロセスの組み合わせ(プロセス・ミックス)
⑤自らの強み
⑥組織構造の適切さ、および活動間のバランス

マネジメントとは、マーケティング、イノベーション、そしてこれら6つの要因にかかわるものと考えられるのでしょう。ここまで目次から、一部を取り上げてそこをだんだんと細かく下りていきました。これだけでもドラッカーのマネジメントのかなりの部分をつかみはじめている気がしませんか?

このように目次を使ったトップダウンアプローチは、短時間で深く本を理解するのに非常に有効です。特にドラッカーは非常に論理的に整理して書いていることもあって、非常に明快です。

次の節の「事業は何か」には以下のような問いが小見出しとして並んでいます。ついつい、ご自身の会社について振り返りたくなるのではないでしょうか?

・自社をいかに定義するか
・われわれの事業は何か
・顧客は誰か
・顧客はどこにいるか。何を買うか
・いつ問うべきか
・われわれの事業は何になるか
・われわれの事業は何であるべきか
・われわれの事業のうち何を捨てるか

『もしドラ』の主人公・みなみちゃんは、これらの問いに真正面からごまかさずに取り組んでいったわけです。あなたもぜひ取り組んでみてください。なお、最初の本・『パンツを脱ぐ勇気』も、著者がアメリカ留学、そしてバッファローウィングとの取り組みの中で、自分自身に対して、投げかけて発見していった過程と読むこともできます。

ぜひ、上の問いと合わせて『パンツを脱ぐ勇気』を読んでみてください。そうすると、あなたの会社、部署、チームだけでなく、あなた自身に対しても「マネジメント」が必要なこと、有効なことがよくわかるでしょう。

Part2の以降の章タイトルは次のようになっています。

ぐるぐる_【第8回】5

『もしドラ』のみなみちゃんが涙を流した箇所は「第5章マネジャー」にあります。

「マネジャーにできなければならないことは、そのほとんどが教わらなくとも学ぶことができる。しかし。学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである。」

ちなみにこの「真摯さ」は”integrity”の訳。この翻訳について、東京大学東洋文化研究所の安冨教授はその著書である『ドラッカーと論語』(東洋経済新報社)において、“integrity”について、真摯さというより「何らかの一貫性を備えており、事態に全人格的に対応するような誠実さ、正直さということではないか」と書いています。

さらに、ドラッカーが「フィードバックを通じた学習」を強調していることから考えて、こうも書いています。

「ドラッカーの要求するintegrity には、学習を続ける姿勢が含まれているはずである。あるいはむしろ、いかなる場面においても、自らの過ちを認めて反省し、自分自身のあり方を改めていく姿勢、『フィードバックを通じた学習』を継続する姿勢のことなのではないだろうか。」-本文引用-
『ドラッカーと論語』(東洋経済新法社)

「自らの過ちを認めて反省」する。これはそんなに簡単なことではありません。歳を重ね、地位が高くなればなるほど、大変になります。自己を正当化するような取り繕い、見栄や対面を捨てる必要があります。この意味において、「パンツを脱ぐ勇気」は最高のマネジメントを学んだといえるかもしれません。

次回は、いよいよ今回の10冊グルグルの最後の書籍です!
どうぞお楽しみに~!!

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速読勉強術、仕事のミスをなくすビジネススキルに関する講演、研修などができる宇都出 雅巳トレスペクト経営教育研究所代表 宇都出 雅巳 講師のプロフィールはこちら

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