宇都出雅巳【第7回】宇都出式グルグル書評本格展開 – 速読勉強術のプロ まとめてグルグル10冊書評

速読勉強術のプロ宇都出雅巳のまとめてぐるぐる10冊書評

今回の書籍は

したたかな生命-進化・生存のカギを握るロバストネスとはなにか』と『学年ビリのギャルが1年で……』。さすがに長いですね(笑)。映画化も決まり、ご存じの方も多いでしょう、通称『ビリギャル』です。

したたかな生命

まずは、『したたかな生命』。いわゆる理系本です。私も文系ですから、多くの文系の人にとって、こういう理系本はちょっと敷居が高く感じるかもしれません。しかし、こういう異分野の本ほど刺激が多く役立つことが多いので、ぜひチャレンジしてみてください。

この本は北野宏明さんと竹内薫さんの共著ですが、北野さんが研究されている内容を、サイエンスライターである竹内さんがまとめたもので、非常に読みやすくなっています。また、プロローグにも「会社組織への幅広い応用を図りたい人にも、ぜひ読んでもらいたい」とあり、実際、牛丼の吉野家を本書のコンセプトで分析したコラムも入っています(出版社がビジネス系出版社のダイヤモンド社ですし)。

では、この本をどう読んでいくかですが、こういう研究者や学者さんの本というのは、構造が明確で、核となるキーワード、コンセプトがはっきりしています。なので、それを追いかけていく読み方が効率的です。そして、キーワード、コンセプトとしては、サブタイトルに明確に出ていますね。

「ロバストネス」

これが本書のキーコンセプト、キーワードになります。
それではまず目次で章タイトルを追いかけていきましょう。

第1章 したたかに生きる強さの条件――ロバストネスとはなにか
第2章 強くなればなるほど弱点が生じる――ロバストネス・トレードオフ
第3章 ロバスト・システムとしての癌――癌をシステムで考える
第4章 遺伝と共生をつなぐ進化のシステム――ロバストネスによる新進化論

おわかりのように、すべての章タイトル(サブタイトル)に「ロバストネス」が入っています。

第1章で、「ロバストネスとはなにか」。それは「したたかに生きる強さ」なんでしょう。そして、第2章にはおそらくロバストネスの大きな特徴というべき「ロバストネス・トレードオフ」。ある点が強くなればなるほど、ある点が弱くなるということなんでしょうね。第3章はロバストネスから癌という具体的な事例を語った章だと思われます。ここに「ロバスト・システム」「システムで考える」とあるので、「システム」というのも、ロバストネスにおける大きな特徴だと考えられます。そして、第4章はロバストネスから新たな進化論が語られています。

目次にある章タイトル・サブタイトルからただ並べて書いただけですが、「ロバストネス」そのものがわからないにしても、本書の流れがなんとなく見えてきたでしょう。

さらに目次にある章タイトルの下の節タイトル(小見出し)から、引っかかるものを抜き出すと、第1章にはそのものずばりの「『ロバストネス』の定義」というものがあります。ここは読んでみたくなるでしょう。第2章には「ロバストにすれば必ずフラジリティが現れる」とあり、「ロバストネス・トレードオフ」ではロバストネスに対するフラジリティが鍵になるということもわかります。

なお、この第2章の節見出しには「ライト兄弟の飛行機」や「オーディオアンプ」、「戦車」、「糖尿病」、「肥満」などの具体的な言葉が並び、さまざまな事例でロバストネス・トレーオフが語られています。第3章は章タイトルからもわかったように、癌をロバスト・システムとして見る章ですが、最後の節見出しで「癌のフラジリティを探せ」とあります。強い(ロバストな)癌ですが、ロバストネス・トレーオフからフラジリティ(弱さ)もあるはずです。そこを探していくんでしょう。

で、癌のフラジリティ(弱さ)って何だろうと知りたくなるのではないでしょうか。そして、最後の第4章には、「生物の進化は、制御システムの進化である」という節見出しがあります。これだけでは何のことかわかりませんが、「制御システムとは何か?」「制御システムの進化とは?」と問いが出てくるでしょう。

このように、目次で章タイトルや小見出しを追いかけていくだけで、研究者や学者さんの本は構造がはっきりしているので、全体の流れがとてもつかみやすくなります。そして、こういう全体像をつかみ、キーワードになじんだうえで本をグルグル回していくことで、だんだんと本の内容がわかってくるのです。そして、本書にはプロローグとエピローグがついていて、本書のねらいや可能性も語られています。これを読むことでさらに本文が読みやすくなります。

P1050011 (2)

ちなみに、本書のキーコンセプトである「ロバストネス」の定義は、「システムが、いろいろな攪乱に対してその機能を維持する能力」。このシステムを会社、さらには個人に当てはめて考えるといろいろとアイデアが出てきそうですね。

もう少し書くと、「ロバストネスを向上させる方法には、大きく四つの方法があります」と書かれています。その4つとは、①システム制御、②耐故障性、モジュール化、デカップリング。

これだけみても何のことかわかりませんが、これらは何だろう?自分の会社、自分自身のロバストネスを向上させるには何ができるのだろう?とさらに本書への興味が湧いてきていると思います。この「読みたい!」「知りたい!」というエネルギーが読書を促していくのです。

あなたの「ロバストネス」、向上させませんか?

ビリギャル

次に取り上げるのは、かの有名な『ビリギャル』です。この本は、まず表紙がインパクトありますよね。かわいい女性(モデルだそうです)が、ミニスカートの制服で太ももを露わにした写真で迫ってきます。男心?くすぐるのは間違いありません。この表紙で売れたというと言いすぎかもしれませんが、あながち外れてもいないでしょう。

で、目次にいきたいところですが、本書の場合、まえがきにあたる部分がなく、その代わりに、10ページ近く1ページに大きな文字で数行ずつの言葉が並んで書かれています。こんな言葉がドーンとまず書かれています。

あなたには
「自分にはゼッタイ無理」って
いつしかあきらめてしまった
夢がありませんか?

また、こんな言葉も書かれています。

この奇跡は
あなたにもきっと起こります。

なかなかひきつけられますよね。

では目次で章タイトルをチェックしてみましょう。

第1章   金髪ギャルさやかちゃんとの出会い
第2章   どん底の家庭事情、批判にさらされた信念
第3章   始まった受験勉強、続出する珍解答
第4章   さやかちゃんを導いた心理学テクニックと教育メソッド
第5章   見えてきた高い壁--「やっぱり慶應は無理なんじゃないかな」
第6章   偏差値30だったギャル、いよいよ慶應受験へ
第7章   合格発表と、つながった家族

真ん中の第4章はタイトルからもわかるとおり、受験ノウハウが整理され、74ページと本全体の4分の1近くを占めています。試験勉強本としてはここが核心部分になり、その他の6章は物語であり、第2章の「どん底の家庭事情」、第7章の「つながった家族」という言葉からわかるように、家族再生のストーリーにもなっています。

そして、この本はもう一つの側面があります。それは、人材育成という面から受験指導をとらえているところです。実は本書の巻末には付録がついています。それは「坪田式人材育成のためのテクニック」。メンタルな部分を中心にそのテクニックが解説されています。そして、この本の物語も「できない受験生」だったさやかちゃんを「できる受験生」に育てていった人材育成のストーリーでもあるんですね。

私の勉強本もそうですが、さまざまな試験勉強のテクニックや考えを解説した勉強本はたくさんありますが、本書のように試験勉強を人材育成としてとらえて書いた本は少なかったように思います。これが本書のヒットのもう一つの要因でしょう。

さて、ここで『しなやかな生命』『ビリギャル』の二冊を並べてみます。

読書は本と読み手の協働作業(コラボレーション)・共鳴現象ですが、こうやって本を並べると本同士が協働・共鳴しはじめます。

『しなやかな生命』のキーコンセプトは「ロバストネス」。ただ、これは『ビリギャル』にそんなに共鳴しませんね……。
と思っていたら、「システムで考える」という『しなやかな生命』の中の見出しが思い浮かびました。もしかして、『ビリギャル』は大学受験、試験勉強を「システムで考える」ことをしたのではないか?と。

試験勉強というと、まずは受験生自体の「頭の良さ」に焦点が当たりがちです。そこを多くの試験勉強本というのは、教科書やテキスト、問題集の読み方や解き方など、受験生とそれらとの付き合い方、難しく言えば関係性にも焦点を当てるわけです。また、昔もありましたが、ここのところ多く出ている受験本のなかに、東大などに子どもを合格させた親がその子育てについて書いた本があります。これは、受験生だけでなく親という要素を入れたシステムとして考えた本といえるでしょう。

そして、『ビリギャル』
そこにはビリギャルとその母親、父親も登場します。もちろん勉強法も語られます。さらに出てくるのが、著者である塾講師である坪田さん。つまり、『ビリギャル』は大学受験、試験勉強を、これらの要素が絡んだシステムとしてとらえた本なのです。

このシステムで合否の決定要因となるのは、受験生本人ではなく、指導者、つまり塾講師。広告のキャッチコピーにも使われたのがこの言葉、

ダメな人間なんていないんです。
ただ、ダメな指導者がいるだけなんです。

ここまで言いきった試験勉強本、受験本はあったでしょうか。
このメッセージは(自分はダメだと思っていた)受験生やその親にとっては、大いなる希望を与えてくれますね。
ベストセラーになった要因は表紙のカバー写真ではなく、ここかもしれません。

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